『一寸法師』あらすじ紹介。ハンディキャップを強みに変えてピンチを切り抜けろ! 小さな男の子が鬼退治で大活躍
公開日:2023/7/1
日本には、数々のおとぎ話が伝承されています。それらのおとぎ話を、幼い頃に読んだことでしょう。『一寸法師』は指ほどの大きさの小さな子どもが、お姫さまをさらおうとする鬼を退治する物語です。今回は楠山正雄が再話した『一寸法師』の作品解説と、主な登場人物とあらすじをご紹介します。
<第9回に続く>
『一寸法師』の作品解説
『一寸法師』は、日本に古くから伝わるおとぎ話のうちの1つです。鎌倉時代から江戸時代にかけて成立した『御伽草子(おとぎぞうし)』のなかに収録されています。それを子どもたちにも読みやすく再話した人物のひとりが、楠山正雄です。楠山正雄は鈴木三重吉が創刊した児童雑誌『赤い鳥』に参加し、国内外問わず昔話・神話・伝説などの再話を積極的に行いました。
『一寸法師』の主な登場人物
一寸法師:夫婦のもとに生まれた小さな男の子。
お父さん:一寸法師の父親。
お母さん:一寸法師の母親。
大臣:「三条の宰相殿」と呼ばれる。一寸法師に自らの家で見習いをさせる。
お姫さま:大臣の娘。一寸法師に和歌などを教える。
2匹の鬼:お姫さまをさらおうとする鬼たち。
『一寸法師』のあらすじ
摂津国の難波(現在の大阪)に住むある夫婦は、なかなか子宝に恵まれず、神さまにお参りをしては「指ほどの小さな子どもでもいいので、子どもをお授けください」と願っていました。その願いはようやく叶い、お母さんのお腹の中に赤ちゃんがやってきました。
夫婦は喜び、やがてお母さんが産んだ赤ちゃんはとても小さく「ほんとうに指ほどの子どもを神さまが下さった」と笑いました。その赤ちゃんはいつになっても大きくならないので、夫婦はその子を「一寸法師」と名づけました。
16歳になっても小さい一寸法師はある日、京都で運試しをしたいと両親に伝えます。お母さんは縫い針の刀に麦わらの鞘、お椀の舟に箸の櫂を支度してあげました。出世を誓って出発した一寸法師は苦労して淀川を上り、京都の鳥羽へたどり着きます。
えらい人の家来になろう、と入った立派な門は、三条殿という金持ち大臣のお屋敷。大臣は法師のあまりの小ささに驚きましたが、おもしろい小僧だと雇ってくれました。
一寸法師は利口で気も利いたので、お屋敷のみんなに可愛がられて働きました。特に13歳になるお姫さまにたいそう気に入られ、すぐ友達のようになりました。
ある時、お姫さまとのけんかで負けた法師は腹いせに、お姫さまがお菓子をみんな食べてしまったと嘘をつきます。大臣の奥方はそのことで自分が大臣に叱られたのが気に食わず、姫の悪口を並べ立て、それを信じた大臣はついにお姫さまを連れて遠いところに放り出すよう法師に命じました。
さすがに気の毒に思った法師はどこまでもお供しようと思い、まずは舟でおとうさんの家に連れて行こうと目指しましたが、しけに巻き込まれて不思議な島に流れ着きます。お姫さまを連れて岸へ上がると、2匹の鬼が襲いかかってきました。啖呵を切って鬼にひと飲みにされた一寸法師でしたが、縫い針の刀で鬼の腹の中を突いたり、片割れの喉を駆け上がって目玉を突いたり大立ち回り。たまらず鬼は逃げ出してしまいました。鬼たちが去ったあとには、振れば何でも欲しいと思うものが出てくる不思議な「打ち出の小槌」が残されていました。
小槌を使ってどんどん自分の背を伸ばす一寸法師を見て驚くお姫さま。立派な大男になった一寸法師は、小槌の力でふたりしてごちそうを食べ、金銀財宝を生み出し、立派な船に乗せて帰ってきました。
その噂を耳にした天子さまが一寸法師を召し出し、ただ者ではない様子を見てご先祖を調べさせると、父方は堀川中納言、母方は伏見の少将という由緒ある血筋だと分かりました。
一寸法師は堀川の少将という位と、お姫さまというお嫁さんをもらって、都に難波の父母を呼び寄せて楽しく暮らすのでした。
『一寸法師』の教訓・感想
小さな体にもかかわらず大活躍した一寸法師。体が小さいこともひとつの個性で、それを活かしたという教訓が込められています。