清少納言『枕草子』あらすじ紹介。#春はあけぼの #いとをかし 平安キャリア女子のエッセイ集
公開日:2023/7/4
平安時代の随筆として有名な『枕草子』。冒頭部分は教科書で読んだことがあるかもしれません。日本三大随筆の一つとされ、美しく簡潔な文章で書かれているのが特徴です。古文は少しとっつきにくく感じるかもしれませんが、内容は今の私たちにも通じるところも多くあります。今回は清少納言『枕草子』を分かりやすく解説し、有名な部分のあらすじをまとめました。平安時代の文化に触れてみてください。
<第82回に続く>
『枕草子』の作品解説
『枕草子』は清少納言という女流作家によって、今から1000年以上前に書かれた随筆です。随筆とは心に思うことを書いた文章で、エッセイという方が耳馴染みがあるかもしれません。清少納言は平安時代中期に中宮(皇后)定子に仕えた女房(宮仕えする女性)でした。定子の周りには、清少納言のような文学や芸術の才能のある女性が集まり、彼女はその宮廷サロンの中でも際立った存在だったようです。
ちなみに、同時代に生きた女流作家の一人に、『源氏物語』の作者・紫式部がいます。紫式部もまた中宮彰子に仕えた女房でした。定子と彰子はどちらも一条天皇の后であり、定子に仕える清少納言と彰子に仕える紫式部は、自然とライバル関係にあったのかもしれません。紫式部の日記には清少納言のことを意識した記述があり、遥か昔から職場における“女の戦い”があったのかも、と思うと興味深いものがあります。
『枕草子』は清少納言が色々な物事に対する自分の考えや宮中での経験を記した、今で言うブログやツイートに近いもの。平安時代の女性の生き生きとした様子が伝わり、現代を生きる私たちも、思わず「わかる!」と言いたくなるようなエッセイ集です。
『枕草子』の主な登場人物
清少納言:『枕草子』の筆者。28歳から7年間余り中宮定子に仕えた。
藤原定子(ふじわらのていし):一条天皇の中宮(皇后)。中宮定子、皇后定子とも呼ばれる。
藤原隆家(ふじわらのたかいえ):中宮定子の弟。中納言。
『枕草子』のあらすじ
『枕草子』は、全体で300ほどの章段で構成されており、一つ一つの段は、自然や四季、文化などの特定のテーマについて並べ記したもの、宮中で起きた出来事を日記のように記したもの、人間関係についての考察を記したものなどが、端的な言葉でまとめられている。
「春はあけぼの」で始まるのは、その第一段。春は夜が明ける頃、夏は夜、秋は夕暮れ、冬は早朝がそれぞれ趣があるとして、四季の美しさが映える時間を切り取って表現しているのが特徴。
第二十六段には「心ときめきするもの」、つまり心がときめくものが並べられる。例えば、誰に会うわけでもないが、髪を洗い、お化粧をして、香を焚いて良い香りの着物を着ている時はなんとも気持ちがよく、恋人を待っている夜は雨の音や風で戸が揺れる音でも胸が騒ぐとある。
第九十八段「中納言参り給ひて」には、宮中での一コマが記される。中納言・藤原隆家は扇にするための素晴らしい骨を手に入れ、妹の中宮定子に献上すると言う。それはどんな骨かと定子に問われ、今まで見たことがないくらい素晴らしいと答える中納言の得意げな声を聞いた清少納言は「クラゲの骨なのでは?」と口を挟み笑いを誘う。硬い骨があるはずのないクラゲを出したユーモアを気に入った中納言が「自分が言ったことにしよう」と言ったエピソードも収録されている。