累計40万部突破の児童書『大ピンチずかん』 ガムを飲んだ、醬油を入れすぎた、など日常の大ピンチの対処法と心構えをコミカルに紹介!

文芸・カルチャー

公開日:2023/7/19

大ピンチずかん
大ピンチずかん』(鈴木のりたけ/小学館)

 2023年上半期ベストセラー児童書部門第1位を獲得するなど、累計40万部を突破したことでも話題の絵本『大ピンチずかん』(鈴木のりたけ/小学館)。今年の上半期で最も売れた児童書である本書の魅力を紹介します。

 本書は世の中のさまざまな大ピンチを、1から100までのレベルをつけて紹介するもの。似ている大ピンチや連鎖的に発生する大ピンチ。それらの対処法などにも言及されていて、あらゆる角度で大ピンチを紹介する一冊です。まず紹介される“大ピンチレベル1”は「ガムを飲んだ」。3人にひとりくらいは経験のある大ピンチと紹介されています。さらに飲んだガムにまだ味がたくさん残っていたら、レベルは2に上がるそうです。

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大ピンチずかん P8
©鈴木のりたけ/小学館

 そのほかにも「テープのはしがみつからない(レベル6)」「しょうゆをいれすぎた(レベル17)」など、どのピンチも「あるある!」と共感する絶妙なものばかり。オチがわかっているのについ何度も観てしまう一発ギャグのような中毒性。SNSでショート動画を次々再生してしまうような“やめられない止まらない”感。著者らしい視点で挙げられる、危機的状況なのになんだか笑ってしまう大ピンチたちがそれらを生み出しています。

 また本書は、大人が子どもに読み継いでほしい児童書や絵本の賞である「キノベス!キッズ2023」でも1位を獲得。「せんたくきのうしろにくつしたがおちた(レベル25)」「おゆがない(レベル50)」など、むしろ大人の方が共感できるのでは?という大ピンチも多く紹介されています。

大ピンチずかん P24
©鈴木のりたけ/小学館

 さらに紹介されている大ピンチの多くには、ページ下部に著者からの一言が掲載されているのですが、「わたしはちいさいころクワガタがカブトムシになるとおもっていたよ。はずかしい!」など著者のかわいい思い違い&失敗談や「ストローはおはしをつきさしてそっとひきぬけばとれるぞ。」という意外な(!?)お役立ち情報が書いてあり、こちらも必見です。

大ピンチずかん P10
©鈴木のりたけ/小学館

 大ピンチはいくつになっても、どんなに気を付けていても、防ぎようがなく訪れるもの。大ピンチが起きないように備えるのも大切ですが、起きてしまった大ピンチを笑い飛ばせるようなメンタルと、そこから挽回する精神力を持つこと。それこそが人生において大切なものなのではないかと、本書を通して感じました。

文=原智香