「グータラ」と誤解をされるOD=起立性調節障害。朝起きられない子どもに寄り添い、問題解決につなげるための一冊
公開日:2023/7/13
子どもが朝起きられなくて、学校に遅刻ばかりで困ってしまう――そんなお悩みを持つ親御さんは少なくないだろう。それでもなんとか起きてギリギリでも登校できるならいいけれど、中には寝床から起きあがることすらできず、学校を休んでしまうようなお子さんもいる。「うちの子、そうかも…」と思った方は、一度「OD=起立性調節障害」を疑ってみてもいいかもしれない。
ODとは、思春期の子どもたちに見られる自律神経失調症のこと。成長期の精神的・肉体的未熟さによって自律神経が乱れてしまい、血液や内臓の動きに不調をきたしてしまうのだ。それが「起きられない」「倦怠感」「腹痛」「頭痛」などの症状につながり、不登校の大きな原因のひとつにもなっている。心配な方には専門医の受診をオススメするが、まずは本で理解を深めるのもいいだろう。
『子どもが起きない!』(渡辺正樹:著・監修、むぴー:漫画/イマジカインフォス)は、神経内科医の渡辺先生と、育児ジャンルでのコミックエッセイで人気のむぴーさんによる異色のタッグで、ODをわかりやすく教えてくれる一冊。ODの原因や客観的に判断する方法といった基礎知識、改善するための具体的なノウハウなど医学的な観点については渡辺先生がしっかり伝え、むぴーさんは「OD患者とその家族の悩める日々」をあたたかいタッチの漫画で見せてくれる。漫画なので気持ちや状況が伝わりやすく、当事者の目線に共感しながらODを捉えられるようになるはずだ。
漫画はこんなストーリーだ。中学2年のサキは、ある日の朝に突然体調が悪くて起きられなくなり不登校に。原因がわからず神経内科を受診すると、担当の渡辺先生(注:本書の著者)に「OD」と診断される。「サキさん、つらかったね」とサキの苦しみに理解を示す先生。「ODは成長にしたがって治る。ただODがきっかけで生活習慣がおかしくなると長引くので、自律神経を整えて改善していこう」とサキを励ますのだった。原因がわかって安堵したのもつかのま、周囲からは「怠けているのでは?」となかなか理解してもらえず、サキの悩みは深まる一方で――。
それでも「なんとかしたい!」と願うサキ親子は、戸惑いながらも渡辺先生から提示された「ODを治す6カ月のロードマップ」を実践していくことになる。このロードマップはHOP期(生活リズムを整える)、STEP期(運動に慣れる/たくさん食べる)、JUMP期(筋肉を鍛える/自律神経を鍛える)の3ステップにわかれた27のミッションから成り立つOD改善アクション。本人だけではなく家族の協力も必須なので決してラクな道のりではないけれど、ちゃんとこなせば「約6カ月でODの改善が見込めます!」と渡辺先生。本書では漫画だけでなく、渡辺先生がひとつひとつのミッションの内容を詳しく解説してくれるので安心だ。
ところで、ODのしんどさをさらに厳しくしているのが周囲の無理解だ。朝は起きられないのに午後は元気で夜はなかなか眠れない…そんな状況はただ怠けているだけの「グータラ病」だと誤解されてしまうのだ。そんな無理解が当事者をさらに苦しめないためにも、ODの知識を広く社会が共有するのも大事なこと。漫画の親しみやすさもプラスされた本書は、より多くの人がODを理解するためにも大いに役立ってくれることだろう。
文=荒井理恵