『ねずみの嫁入り』あらすじ紹介。日本一美しい娘にふさわしい婿は誰? この世で一番“偉い”のは…

文芸・カルチャー

公開日:2023/7/21

 少子化が進む中、何かと「結婚」「婚活」が話題になりがちな現代。『ねずみの嫁入り』は、ねずみの夫婦が日本一の娘にふさわしい婿を求めてまわるという、ある意味、婚活を題材としたお話です。内容をご存じの方も多いでしょうが、いま読むとなかなか奥深い解釈ができるかもしれません。本稿では『ねずみの嫁入り』の内容についての解説と、あらすじを最後までご紹介します。

<第16回に続く>
ねずみの嫁入り

『ねずみの嫁入り』の作品解説

『ねずみの嫁入り』は、起源を辿ると古代インドまでさかのぼることができ、日本では鎌倉時代の仏教説話集『沙石集』に見ることができます。

 また、話を読んでいただければ納得できると思いますが、『ねずみの嫁入り』とは、あれこれと選んでみても結局代わり映えのしないところに落ち着くというたとえにも用いられます。

『ねずみの嫁入り』の主な登場人物

ねずみの夫婦:お金持ちで、娘にふさわしい婿を探す。

ねずみの娘:お父さんねずみとお母さんねずみの娘。日本一美しい。

太陽・雲・風・壁:娘ねずみのお婿さん候補

ちゅう助:お隣に住んでいるねずみ。娘の婿となる。

『ねずみの嫁入り』のあらすじ​​

 むかし、むかし、ある倉で暮らす裕福なねずみの夫婦がいました。何不自由ない生活を送っているねずみの夫婦でしたが、この夫婦には子どもがいません。そこで神様にお願いしたところ、願いが叶い、ねずみの夫婦は念願の子どもを授かりました。

 産まれた子ねずみは女の子で、蝶よ花よと愛情いっぱいに育てられ、やがて並ぶ者がいない日本一美しいねずみの娘に育ちました。ねずみの夫婦は娘のあまりの美しさから、「ねずみの中には娘の婿にふさわしい者はいない。日本一美しい我が娘にふさわしい、偉い婿を探さねば」と考えました。

 そこで、まずは空の上から明るく世界を照らす太陽を訪ね、婿になってほしいとお願いしました。しかし、太陽には「私を隠すことができる雲の方が偉い」と断られてしまいました。

 では、雲に婿になってもらおうと訪ねたところ「私を吹き飛ばせる風の方が偉い」と、またしても断られてしまいます。

 続いて風にお願いした夫婦ですが、やはり「私の力をもってしても、吹きとばすことはできない壁の方が偉い」と辞退されてしまいました。

 難航を極める婿探しでしたが、夫婦はあきらめません。壁のもとを訪ね、婿になってほしいとお願いします。しかし、壁にもまた「世の中には私よりもっと偉い者がいる」と断られてしまいます。

 そこで夫婦が、「壁さんより偉い方とはどなたですか」と尋ねると、意外な答えが返ってきました。「それは、ねずみさんです。ねずみさんは平気で私に穴をあけて通り抜けていきます。だから最も偉いのはねずみさんです」。

 自分たちがいちばん偉いのかと満足したねずみの夫婦は、帰途につき、お隣に住むちゅう助をお婿さんに迎えました。

 こうして結婚した2人はとても仲良く暮らし、たくさんの子どもを産んで、ねずみの一家はいっそう栄えるのでした。

『ねずみの嫁入り』の教訓・感想​​

 太陽も雲も風も壁もねずみもそれぞれに偉い(すごい)ところがあります。人にもそれぞれ長所があるということ。素直に、他者のすごいところを認めることの大切さも学べるのではないでしょうか。また、物語の結末で、幸せは身近なところにあるということも教えてくれます。