ドラレコには録画できない裏の景色がある。やさぐれトラックドライバーたちの24時間道路上生活

社会

公開日:2023/7/19

やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます
『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(橋本愛喜/KADOKAWA)

 西へ東へ全国津々浦々、84万人が運送する“日本の血液”と言われる物流業界。トラックドライバーたちの目に映る景色は一体どのようなものなのか!? 危機せまる「2024年問題」、「送料無料」の実態、「トラガール」の違和感、「コロナ禍」の苦労、根深い「飲酒問題」など、まさに“モヤモヤ大渋滞”。生活に欠かせない物流の現場を知ることで、目の前の荷物がまた違って見えてくることでしょう。

※本稿は『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(橋本愛喜/KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

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トラックドライバーたちの目に映る景色は一体どのようなものなのか

トラックドライバーと酒

 緑ナンバーのドライバーには、毎度運行前の点呼時に「アルコールチェック」が義務付けられている。検査に引っかかれば、当然その日の運行は停止。始末書を書かされたり、なかには解雇されるケースもある。

 影響を受けるのは本人だけではない。当日朝に突然ドライバーが走れなくなれば、その日の運行スケジュールが狂うことはもちろん、なにより会社の信用問題に直結する。客である荷主からは会社すべてのトラックが出入り禁止にされたり、最悪の場合取引停止になることもあるのだ。

 アルコール依存症と闘う人たちや、トラックの飲酒運転によって幼いお子さんを亡くされた遺族の方たちの話を聞いているうちに、トラックドライバーの労働環境が元々、ある意味「酒と非常に相性がいい」と気付いた。

①ストレス

 会社や荷主、現場との上下関係などによるストレスが多いうえ、運転中は「人を殺めるかもしれない」、「時間に間に合わせないといけない」というプレッシャーがのしかかる。それらから解放されたいと、酒に手が伸びやすくなるのだ。

②不規則な睡眠時間

 日によって労働時間が変わるため、寝る時間もまちまち。以前現役トラックドライバーに取ったアンケートでは、繁忙期の睡眠時間の平均が3~5時間という人が一番多かった。

③孤独な環境

 長距離ドライバーの場合は、仕事中(運転中)も休息時間中もひとり。苦労話を直接共有できる仲間もそばにおらず、人恋しさを紛らわすために酒を飲む人も少なくないのだ。

④冷蔵庫の存在

 トラックドライバーのなかには、キャビンのなかに冷蔵庫やクーラーボックスを設置している人がいる。長距離トラックドライバーたちにとって、キャビンは仕事場でもあり居住空間。長期間地元に帰らず24時間道路上で過ごす。

 そんななか、幾度となく飲酒運転による事故を起こしてきたトラック。業界は必死になって酒とのイメージを切り離そうと努力してきた。

 無論、終業後は「完全自由な時間」。飲酒しても法律上は全く問題ない。しかし、酒はソフトドリンクと違い、摂取後しばらくの間行動を制限される飲み物。殺傷能力の高いトラックで事故を起こせば、人の命をも奪いかねないのだから、トラックドライバーはたとえ退勤後でも運行時の安全運転を意識する必要がある。

 遺族の言った「これだけ職種がある中、酒好きがなぜわざわざハンドルを握る仕事を選んだのか」という言葉は重い。