「社畜」が赤ちゃんに転生したら? 赤ちゃんライフはかなりブラックだった! 成人男性視点の超リアルな育児マンガ
更新日:2023/12/1
生まれたばかりの赤ちゃんのお世話があんなにも大変だとは思わなかった。『赤ちゃんに転生した話』(茶々京色/KADOKAWA)を読むと、ふと、あの頃の我が子を労りたくなる。このマンガは、「次にくるマンガ大賞2023」にもノミネートされている、今注目の作品。赤ちゃんを育てたことのある人、そして、これから育てる人は、特に関心が高くなるに違いない育児マンガだ。
かつて「赤ちゃんなんて、泣いたらオッパイ飲ませるか、オムツ替えればいいだけでしょう?」と完全に子育てを舐めきっていた私は、オッパイを飲ませようにも上手く吸えずに泣き止まない我が子の姿に衝撃を受けた。どうにか飲ませても、飲みすぎたのかケロッと吐いたり、ブリブリッとウンチをして、それが背中漏れしたり。原因不明の夜泣きも、いくらあやしても泣き止まないのも日常茶飯事。そんな生活にヘトヘトにさせられたが、一番大変な思いをしていたのは、もしかしたら、子ども自身だったのかもしれない。親が慣れない生活に不安を感じていたのと同じように、子どもも、思うように声すら出せず、寝返りも打てない、頭さえ動かせない身体に、困惑していたのかもしれない。
本作の主人公は、ブラック企業の過酷な業務で命を落とした撫倉和史・23歳。目が覚めると、彼は、大人の心を持ったまま、とある夫婦の赤ちゃんに転生していた。「赤ちゃんなんて楽勝し放題」と喜ぶ和史だったが、赤ちゃん生活は想像以上にストレスフル。今までのような激務とは無縁のはずが、乳幼児の成長過程は意外とブラックだった。
このマンガは新感覚。「赤ちゃんあるある」を描いたマンガは数多くあるだろうが、この作品は、赤ちゃんに転生した成人男性の視点で、その生活が実況されているから、面白い。
たとえば、赤ちゃんの身体はかなり不自由。私の子ども同様、生まれたばかりの赤ちゃんにとって、オッパイを吸うことは結構難しいことらしい。和史もおなかが空いて身の危険を感じ、慌ててオッパイを探すが、首の制御が利かず、オッパイが見つからずに大パニックに。「寝不足だったし思う存分寝よう」と思っても、少しの刺激で身体がビクッと動き、バンザイの姿勢になってしまうモロー反射が起きて寝られない。「生まれたばかりの赤ちゃんって、視力が0.02程度しかないのか!」「たくさん吐き戻しをするのは、赤ちゃんの胃が大人の胃とは違ってまだまだ未熟で、筒状に近い形をしているせいなのか!」「自分で髪の毛を全力で引っ張って泣いていたのは、把握反射で手のひらが開かなくなって困っていたのか!」。医療監修もされているというその内容は、発見の連続。昨年、出産した身としては、「そうそう、こうだった」と思わされると同時に、「もっと早く知っていたら、育児の不安が減ったのに」と思わされることばかり。これから子育てに臨む人たちは、このマンガが強い味方になるに違いない。楽しく読み進めるうちに、育児の知識が自然と身についてくるのだ。
本作には、幸せな育児や夫婦円満、孫に好かれるヒントが満載。赤ちゃんの気持ちが分かるような気がするのはもちろんのこと、母親がどんな思いで子どもと向き合い、何にストレスを感じているのかも見えてくる。母親になる人、父親になる人、祖父母になる人……いや、これからの少子化時代を生きるすべての人に読んでほしい。読めば、赤ちゃんに対してはもちろんのこと、子どもを育てるすべての人に優しい気持ちになれるに違いない。
文=アサトーミナミ