子どもがかんしゃくを起こしたら、コップ一杯の水を差し出す!? 6~11歳の子どもの気持ちがよくわかる、フランス発のベストセラー
公開日:2023/7/21
私は小学生のとき、自分の気持ちをわかってくれない大人に対し「なぜ大人は自分も子どもだった時代があるのに、子どもの気持ちがわからないんだろう」と不思議に思っていた。そして、同時に「自分が大人になったら、絶対に子どもの気持ちがわからない大人にはならない」「今の気持ちを絶対に忘れない」と決めていた。とはいえ、大人には大人の事情もあって、子どもにとって今の私が「理解のない大人」に映っていないとも限らないし、子ども時代の気持ちは努めて維持しようとしても風化する。
ということで、子どもの気持ちを再確認、思い出す目的もあり、『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(イザベル・フィリオザ:著、アヌーク・デュボワ:イラスト、土居佳代子 :翻訳/かんき出版)を開いた。本書は、6歳から11歳の子どもの脳の発達と自律性形成に焦点を当てた育児書。神経生物学や生理学に基づき、子どもの話を聞くことや同調することを大切にし、子どもの行動の裏にある動機を理解する手法を提案している。フランスではシリーズ60万部突破の世界的なベストセラーとして人気を博している。
6歳から11歳といえば小学生にあたる。本書によると、この年齢の子どもたちは、幼児期以前や思春期に比べれば「静かな、しばし休憩の時」にも思えるが、実はこの時期も「脳や愛情、社会的能力を培うための非常に重要な時期」となる。本書は、6歳から11歳までの年齢ごとに、
(1)子どもの頭の中で起こっていることについての理解
(2)子どもたちの態度
(3)子どもたちが求めていることにどう応えるか
について、非常に具体的な事例を多く列挙しながら、“子どもの気持ちがわかる”ように解説してくれている。事例は「かんしゃくを起こす」「接触を拒否する」といった、どの親も気になるものから、「拳銃遊びをする」「犬を怖がる」といった限定的なシチュエーションまで、幅広く取り上げられている。
では、本書の事例から、「かんしゃくを起こす」について、本記事では簡単に紹介してみたい。
子どもが場をわきまえずかんしゃくを起こしたら、親は叱ったり罰を与えたりするかもしれない。しかし、本書によると、そういった対応は意味がない。確かに、叱ったり罰を与えたりすることで、子どものかんしゃくは一時的に止んだ“ように”見える。かんしゃくを起こすときの子どもの脳は、扁桃体と呼ばれるアーモンドの形をした小さな組織がホルモンの洪水を起こしており、子どもはこの緊張を感じ取って爆発したような状態になっている。叱ったり罰を与えたりしても、ストレス自体は消えていないため、少しするとまた爆発する、というのだ。
では、どうしたらいいのか。
本書は、子どもの脳を落ち着かせ、ストレスを緩和させる必要がある、と説く。有効な事柄は、次のようなものだ。
・身体の接触、優しさ、親の安心させる声、愛着の表現
・深くておだやかな呼吸
・内部感覚(身体の内部からの刺激源によって身体内に起こった変化を感じ取る感覚)へ関心を向けること
・感情表現の受け入れ
・コップ一杯の水
・木や草の緑を見る
・運動(歩く、走る、大きくゆったりした動き)
・音楽、笑い
例えば、子どもが部屋でかんしゃくを起こしたら、親は深呼吸して、優しく笑いかけ、水の入ったコップを差し出す…といった方法を本書は勧めている。
感情を専門とするセラピストである著者の文体は柔らかく、子どもの行動心理の研究者でもあるイラストレーター・アヌーク・デュボワ氏のイラストは温かく、読者は安心して読み進めることができる。
「本当はわが子を叱りたくないのに」「最近、子どもが何を考えているかわからない」といった親にお勧めしたい。
文=ルートつつみ
(@root223)