『猿かに合戦』あらすじ紹介。親ガニを殺された子どもたちの仇討ち物語
公開日:2023/7/27
日本には『桃太郎』や『一寸法師』など、数多くの民話が残されています。『猿かに合戦』もそのひとつで、猿とかにを主人公にしたストーリーになっています。意地悪をされた果てに殺されたかにの子どもが、猿に仇討ちするまでを描いています。本稿では『猿かに合戦』のあらすじと、その作品解説と登場人物をご紹介します。
<第21回に続く>
『猿かに合戦』の作品解説
『猿かに合戦』は日本に古くから伝わる民話のひとつです。室町時代末期に成立したとされており、江戸時代には「猿蟹合戦絵巻」が作られました。日本人にとっては馴染み深い昔話のひとつであり、芥川龍之介が猿かに合戦のパロディ小説を書いたことで有名です。
1954年から2011年にかけて、小学校3年生向けの国語の教科書に掲載されていた作品で、新美南吉の代表作のひとつとされる作品です。
『猿かに合戦』の主な登場人物
猿:わがままでずる賢い猿。カニに意地悪をして、ついには殺してしまう。
カニ:優しい性格。柿を育てたが猿に横取りされ、殺されてしまう。
子ガニ:カニの子ども。親ガニを猿に殺され、仇討ちを決意する。
栗・蜂・牛糞・臼:子ガニの仇討ちに協力する。
『猿かに合戦』のあらすじ
ある日、猿は嬉しそうにおにぎりを持っているカニを見かけました。腹ペコだった猿は、カニに「おにぎりと、この拾った柿の種を交換しよう」と提案するも、渋られてしまいます。そこで猿は「おにぎりは食べればなくなってしまうが、柿の種を植えれば柿がたくさん実る」と、カニを騙し、おにぎりと交換させました。
カニは早速、庭に柿の種を植えました。やがて、芽が出て木になり、柿の木はおいしそうな赤い実をたくさん実らせます。しかし、背が低いカニには柿の実が取れず、木にも登れません。それを見ていた猿は「代わりに自分が登って取ってやる」と提案。喜んだカニでしたが、木に登った猿は柿を独り占めして、カニに取ってあげる様子はありません。それどころか、カニが催促すると、熟していない青く硬い柿の実をカニに投げつけました。硬い柿の実をぶつけられたカニは、甲羅が割れ、子どものカニを産み、死んでしまいました。
親ガニを殺された子ガニは、同じく猿に迷惑していた栗と蜂と牛糞と臼とともに仇討ちを誓い、猿の留守宅に忍び込みます。そして、猿が帰宅し囲炉裏で暖を取ろうとした刹那、熱々に焼けた栗が飛びだし猿は火傷をしてしまいます。さらに、水で冷やそうと水桶をあけると、潜んでいた蜂に刺され、あわてて家から逃げようとするも戸口で待ち構えていた牛糞に滑り転倒。とどめに屋根から落ちてきた臼に潰され、猿は死んでしまいました。こうして子ガニたちは見事に仇討ちを果たしたのでした。
『猿かに合戦』の教訓・感想
やられたからやりかえして…と意外と救いのないお話ですが、欲を出し、他者を騙して利益を得ても、結局自分に返ってくるというメッセージが込められています。最近では猿が改心して仲良しになる展開もあるようです。