職場で粘土をこね始める型破りな女?恋にまっすぐな、幸せに向かって猪突猛進する主人公に元気をもらう!『ハッピー・マニア』

マンガ

公開日:2023/7/29

ハッピー・マニア
ハッピー・マニア』(安野モヨコ/祥伝社)

 マンガ家・安野モヨコ氏の最新作『後ハッピーマニア』(祥伝社)。安野氏の初期の名作『ハッピー・マニア』に登場する人物たちのその後を描いた作品で、2023年7月現在既刊4巻。アラフォー・アラフィフ世代のリアルな描写と相変わらずのカヨコのとんでもなさが同居し、新刊が出るたびに話題を集めています。そんな『後ハッピーマニア』を余すことなく楽しむために必要なのが、前作『ハッピー・マニア』。まだ読んでいない方はもちろん、一度読んだことがある方が読み返してもきっともう一度楽しめる、『ハッピー・マニア』の魅力を紹介します。

とにかく勢いがすごい! シゲカヨパワーに勇気をもらえる

 本作の肝は猪突猛進な主人公・重田加代子の勢いです。重度の恋愛体質であるカヨコの口癖は「彼氏ほしい!」。タイプの男性と出会うとすぐに運命の人だと思い込み、仕事も忘れて一直線。簡単に体を許しては冷たくされたり、自分で「何か違う」と気づいたり。相思相愛の穏やかな恋人同士にはなれず、毎度「何がいけなかったの!?」と親友フクちゃんに泣きつきます。こう書くとすごくダメ人間のように思えてしまいますが(というか実際そうなのですが)、なんだか憎めないのがカヨコの魅力。そしてここまで型破りなのに、相手のことを考えすぎて自滅したり、好きな人の幸せのために他の女性との関係を応援するような行動に出てしまったり。「なんだかわかるなあ」と共感してしまう部分を多く持っているのも、彼女から目が離せない理由のひとつです。陶芸家を好きになったら突然職場で粘土をこね始めるなど、型破りすぎるカヨコを見ているとこちらにも力が湧いてくるような気がします。

シゲカヨは反面教師!? 恋愛について学ぶこともたくさん

「あたしはあたしのことスキな男なんてキライなのよっ」というのは、作中のカヨコの名言。当時大学生だった筆者はこの言葉に深く共感してしまいました。しかしこれこそがカヨコがダメな男にハマる一番の原因。まず自分のことを好きになって一番大切にすれば、そんな自分を大事にしてくれない男にハマることはないのだと、今ならわかります。他にも「うまくいかない人は運命の相手じゃないのよ」(byフクちゃん)など、本作には名言がたくさん。読んでいるうちに我が身を振り返り、勉強になること間違いなしです。

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読めば『後ハッピーマニア』がより楽しめる

 例えばカヨコが恋愛のトライ&エラーを繰り返す傍らで、彼氏が既婚者であることが判明したり、友達と同じ男を好きになったりとこちらも波瀾万丈な人生を歩むカヨコの同居人・フクちゃん。そしてそのフクちゃんが好きになった男・田嶋も『後ハッピーマニア』に登場します。本作を読んでから『後ハッピーマニア』を読めば、「こいつ相変わらずだな……」なんて昔の友達に再会したかのような気持ちで読むことができるでしょう。そして最重要キャラであるタカハシのカヨコへの深い愛は、『後ハッピーマニア』を読んでから改めて読むと胸が苦しくなるほど。「(タカハシが)浮気したまま帰ってこなかったら、あたしは一体どうするんだろう?」など振り返ると伏線のようなセリフもたくさんちりばめられているのも楽しい。

 連載終了から20年以上が経っていますが、安野氏ならではのギャグセンスとひりひりするほどの感情描写は今もなお私たちの胸に響くものばかり。ぜひ手に取ってみてください。

文=原智香