一夜で売上50億円超をつくり出す! 総合格闘技「RIZIN」「THE MATCH」仕掛け人が考える、お金の真価とは

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公開日:2023/7/27

負ける勇気を持って勝ちに行け! 雷神の言霊
『負ける勇気を持って勝ちに行け! 雷神の言霊』(榊原信行/KADOKAWA)

 旗揚げから約8年、いまや日本発の総合格闘技を牽引する「RIZIN」、那須川天心vs武尊戦があまりにも注目を浴び興行売上も大成功を収めた「THE MATCH 2022」。その仕掛け人は、伝説的イベント「PRIDE」も立ち上げた“格闘技に全霊を捧げる男” RIZIN CEO 榊原信行である。7月27日発売、榊原初の著書『負ける勇気を持って勝ちに行け! 雷神の言霊』(KADOKAWA)より一部抜粋し、新時代の“勝てるエンタメビジネス論”を記す−−。

新時代の“勝てるエンタメビジネス論”

お金は紙切れでしかない

 お金は紙切れでしかない。お互いの条件を納得し合うために必要な道具ではあるが、それ自体に価値があるわけではないのだ。

 PRIDEを売却したことで、その時点では何もしなくても生きていけるくらいのお金は手に入れたが、それでも私は不幸せだった。

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 私には、何もしなくても生きていけるお金よりも、日々悩んだり、苦しんだりしてあくせく働いて、「自分はこれに懸けて生きているんだ」と思えるものがあることのほうが重要だったのだ。

 だから、自分をエンターテインさせるもの、エキサイトさせるものには、お金を使っている。もちろん物欲が全くないわけではないが、それよりも、自分がみんなに見せたいものを生み出すためにお金を使いたいのだ。

 実現するにあたりクリアすべき問題がお金で解決するのならば、用意すればいい。

 「私は金では動きません。金の問題ではないんです」「私が欲しいのはお金ではなくて○○なんです」というケースは手に負えない部分もあるが、そもそもお金で解決できる話は簡単だと思っている。絶対的にお金では解決しないことで雌雄(しゆう)を決したり、やる・やらないが決まったりすることが、一番大変なのだ。

 そういう意味では、お互いが納得する物差しの一つがお金といえる。

 プロモーター業を続けることで、私のなかの貨幣の価値は下がってきている。

 もし私が守銭奴(しゅせんど)だったなら、RIZINは間違いなくできなかった。自分の取り分が足らなかったとしても、自分の分を吐き出し、さらにはどこかから借りてきてでも実現させるためにはお金を張る。そうすることで、みんなの見たいものが、この6、7年で実現できているのだ。それはPRIDEの時代もそうだった。

 例えば、ある選手にファイトマネーを1億円払うけれど、自分は10億円もらう、というようなことはない。逆に、ある選手に1億円支払うことが条件だとしたら、マーケットから得られるお金が7000万円で、収支が3000万円合わなければ、その3000万円は自分の借金としてどこかから借りてくることになる。

 だから、私個人としては日々暮らしていくくらいのお金はあるのだが、億ションを買ったとか、とんでもない絵画を競売で競(せ)り落としたとかは何もない。

 ただ、私はほかの人が持っていないものを持っている。それが、RIZINというブランドだ。そこで命を懸けて闘う選手、興行の成功に向けて一緒に走ってくれるスタッフが私のかけがえのない財産なのである。

 「榊原さんはいいよね」と言われることがある。「あなたは後世に名が残る。私は、お金は持っているけれど、そういうものは何もない」と。

 そういう人には「もしかしたら一文無しになるかもしれないけれど、今あるお金を使って、何かにチャレンジしてみればいいじゃないですか」と言いたい。

 私が行うチャレンジとは、自分がやりたいことを具現化するためにお金も知力も体力もすべてを懸けることだ。どこかにお金だけを預けて自分自身は何もせず、汗もかかないような投資をする気はない。だから、PRIDEやRIZINをやるようになってからは、ギャンブルにも全く興味がなくなった。今、自分がビジネスとしてやっていることが、いうなれば一番エキサイティングなギャンブルだからだ。

 お金が理由で「無理です」とは言いたくないという思いがある。もちろん、そこまでお金をかける必要はないと判断することはあるし、そういうところにお金は張らない。けれども、余分にお金を払ってでもやっておくべきことや、RIZINにとって、日本の格闘技界の未来にとって、今やるべきことなのであれば、たとえ収支が合わなかったとしても、お金に糸目はつけない。

 そして、そこに対する感覚は誰とも共有していない。それは自分のケツは自分で拭く、という覚悟だ。

 「そんなに払うのはやめませんか」と言われたことは、何度もある。フロイド・メイウェザーとの契約金もそうだ。「毒にも薬にもなるような選手に大枚(たいまい)をはたいて、今のRIZINに引っ張ってくることが本当に必要なんですか?」と聞かれたこともある。

 でも、私はその先を見据えている。メイウェザーがRIZINに来ることで、そのなかで起こる化学反応が、1年後、2年後、3年後にどう生きてくるのか。それを生かすも殺すも、自分がその後どうするかによって決まるのだ。

実現するにあたりクリアすべき問題がお金で解決するのならば、用意すればいい
画像提供:©RIZIN FF
もしかしたら一文無しになるかもしれないけれど、今あるお金を使って、何かにチャレンジしてみればいいじゃないですか
画像提供:©RIZIN FF
自分のケツは自分で拭く、という覚悟
画像提供:©RIZIN FF