『かちかち山』あらすじ紹介。実は残酷でホラーな物語だった!? おばあさんを煮込んだ「ばばあ汁」をおじいさんに食べさせたタヌキへの因果応報

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/15

 日本人なら誰もが知る童話、かちかち山。幼少時、絵本などでタヌキに同情した方もいらっしゃると思いますが、改めて読み返してみると相応の罪を犯しています。

 本稿では、楠山正雄『かちかち山』のあらすじをわかりやすく解説します。これでもかと悪役に描かれているタヌキが一体何をしたのか、思い出しながら読んでみてください。

<第28回に続く>
かちかち山

『かちかち山』の作品解説

 民話としての『かちかち山』が成立した時期は、室町時代後期とされています。作中でウサギが行うお仕置きは古い裁判の方法であり、中世ヨーロッパの魔女審判などにもみられる「無罪なら無傷、有罪なら傷つく」の考え方に基づくと言われています。児童文学者・楠山正雄によって他の民話とともにまとめられ、童話として広まりました。

『かちかち山』の主な登場人物

おじいさん:畑仕事をしながらおばあさんとふたり暮らしをしている。

おばあさん:ずる賢いタヌキに隙を見せてしまったばかりに、ひどい目に遭う。

タヌキ:いたずら好きのタヌキ。

ウサギ:おじいさんから事情を聞き、いろいろなお仕置きでタヌキを懲らしめる。

『かちかち山』のあらすじ​​

 むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんが暮らしていました。畑仕事をしているおじいさんは、逃げ足の速いタヌキのいたずらに悩んでいました。ある日、仕掛けた罠にタヌキがかかり、喜び勇んでタヌキ汁にしようと持ち帰ります。

 おばあさんは吊るしたタヌキの見張りがてら、おじいさんの留守中に臼で麦をついていました。しかしおばあさんの良心に付け込んだタヌキに杵を取られ、後ろから頭を殴られて帰らぬ人になってしまいます。

 タヌキは自分の身代わりとして「ばばあ汁」を仕立て、おばあさんに化けて帰ってきたおじいさんをもてなしました。夢中で食べるおじいさんでしたが、タヌキが正体を明かして逃げ出したのでびっくり仰天。台所に打ち捨てられたおばあさんの骨を抱いて、おじいさんが泣いていると、そこへ裏山に住むおじいさんの友達・白ウサギが心配してやってきます。おじいさんからタヌキの仕打ちを聞いたウサギは、タヌキを懲らしめようと決意しました。

 自分がおじいさんやおばあさんにしたことが怖くなり、怯えて穴に隠れていたタヌキのもとを、柴刈りの服装をしたウサギが訪ねます。ウサギは「柴を担いで向こうの山まで行ってくれれば、栗の実をあげる」とタヌキに持ちかけました。タヌキは栗ほしさにまんまと柴を担いで山を歩きますが、その背中からウサギが火打ち石で火をつけました。火打ち石のかちかちという音や、柴の燃えるぼうぼうという音を怪しむタヌキでしたが、ウサギは「この山はかちかち山だから」「向こうの山はぼうぼう山だから」とのらりくらりかわし、タヌキの背中を大やけどさせます。さらに翌日、穴蔵で苦しむタヌキに唐辛子味噌を差し入れ、「やけどによく効く軟膏だよ」とだまして塗り込み、さらなるお仕置きを行ったのです。

 数日後、「タヌキはどうしているだろうか、今度は海に連れ出してやろう」と考えていたウサギのところに、すっかりやけどが治ったタヌキが訪ねてきました。山はもうこりごりというタヌキを、今度は魚釣りに連れ出すことにしたウサギ。ウサギが木の舟を作ると、うらやましがったタヌキは真似して土の舟を作ります。

 海へ出た二匹が競争しながら沖へ行くにつれ、タヌキの土の舟はみるみる沈没し始めました。助けてくれと大さわぎするタヌキに、ウサギは「おばあさんをだまして殺して、おじいさんにばばあ汁を食わせたむくいだ」と言い放ちます。あわてるタヌキはそのうち沈んでいき、その様子をウサギはおもしろがって見ていたのでした。

『かちかち山』の教訓・感想​​

 悪いことをした者には罰が与えられるというメッセージが込められた作品です。おじいさんの大切な人であるおばあさんを「ばばあ汁」に仕立て、おじいさんにだまして食べさせるというタヌキのかなり残酷な行いが描かれていますが、ウサギによって罰せられ、同様にだまされ殺されてしまいます。因果応報についても学べる作品です。