家でも外でも頑張りすぎている日本人女性へ。ドイツ人の思考と暮らしから学ぶ「ほどほどに頑張る」生き方

暮らし

公開日:2023/8/9

ドイツの女性はヒールを履かない
ドイツの女性はヒールを履かない――無理しない、ストレスから自由になる生き方』(サンドラ・ヘフェリン/自由国民社)

 日本では「頑張ること」が美徳とされやすい。例えば、日本人女性の場合は仕事でも家庭でも頑張ることを求められやすく、さらに社会のマナーに従って自身の身だしなみにも気を遣わねばならない。

 2021年版の経済協力開発機構(OECD)の調査によると、33カ国中、最も寝ていないのは日本人女性であることが分かったそう。頑張ることが当たり前になっている私たちは、一体どうすれば「ほどほどに頑張ろう」と肩の力を抜いた生活ができるのだろうか……。

 参考になるのは、ドイツ人の生き方をヒントに、自分の日常を見直せる『ドイツの女性はヒールを履かない――無理しない、ストレスから自由になる生き方』(サンドラ・ヘフェリン/自由国民社)だ。

 著者のサンドラ・ヘフェリン氏は、ドイツ人の父親を持ち23歳までドイツで暮らしていた日独ハーフ。本書ではドイツ人の日常を例に出し、心が楽になる生き方を提唱。私たちが抱えている「こうあるべき」という不自由な固定観念を捨てるヒントを授けてくれる。

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結婚や出産に焦る…年齢の呪縛から逃れるには?

「おひとり様」という言葉が浸透した今も、日本にはどこか「結婚はしなくてはならないもの」という雰囲気が漂っており、さらに結婚後には「早く子どもを…」と焦らせる空気感がある。そんな苦しみを感じている人に響くのが、年齢に縛られないドイツ人の生き方だ。

 日本では就職活動のように、その年齢に達したほとんどの人が、まったく同じタイミングで同じことをスタートするシステムが出来上がっている。そのため少しでも遅れたりその動きから外れたりしてしまうと疎外感を抱いてしまうことになる。

 だがドイツでは小学校に入学したり、ギムナジウム(ヨーロッパの中等教育機関)を卒業したりする年齢は、なんとこの時点ですでにバラバラ。大学に入る前に1年間、世界放浪する人もいるなど、当然ながら大学を卒業する年齢もまちまちなのだ。

 こんな状況を見て、著者は日本人の悩みの発端となりやすい「何歳の時には○○すべき」という呪縛から、一旦離れようとアドバイスしている。自分が「普通」だと思っていたことも、少し世界を見渡してみると全然常識ではないことが分かる。その事実に気づくと、年齢はただの記号であると心の底から思え、より自分のペースで人生を楽しんでいけるのではないだろうか。

自分の手でこなす家事は極力シンプルに!

 やらなければいけない家事が多くて、気づけば心身共に限界……。そんな状況に苦しむ人の心を軽くするのが、ドイツ人の家事に対する考え方。著者いわく、ドイツ人はとにかく機械と他人に頼って家事を終わらせ、自分の手で行うことは極力シンプルにしているという。食器洗いは食洗機に任せ、掃除は月に何回かはプロに外注。そもそも家事は時間がかかるものとして最初から諦めて外注するため、家事のためにわざわざ時間を作ったり、週末を家事に当てたりすることはないという。

 その一方で、部屋の置物や飾りには自分たちのこだわりを反映している。最初から家事を諦めるという思考でストレスから自分を解放し、心地よい空間を保っているのだ。

 日本でも、近年は家事外注のススメを耳にすることが多くなってきたが、まだまだ「家のことを他人に任せるのは甘え」と、自分を律してしまう人が多い。そんな人が、心を厳しく縛っている手綱を緩められるよう、本書に記された無理をしすぎない生き方が広く浸透してほしいと感じる。

 著者は他にも、ドイツ人の仕事の仕方や学校のシステム、友人との過ごし方などを通して、心の負担を減らす思考法を伝授。同じくドイツにルーツを持つ門倉多仁亜さんへのインタビューも掲載されているのでぜひチェックを。

 女性はもちろん、男性にも新たな気づきを得られる一冊であると私は感じた。忙しい日々の中でふと立ち止まり、自分が本当は何を求めていて、どんな幸せを欲しているのかを気づかせてくれる力があるからだ。「自分はそんなに頑張っていない」「まだまだ頑張れるはずだ」そう思っている人にこそ、本書を手に取ってほしい。

文=古川諭香