「これぞ紙の本の醍醐味」「さすが恩田陸」と反響続々。心くすぐる“粋な仕掛け”にファン大興奮! 恩田陸『鈍色幻視行』の作中小説が現実のものに…
公開日:2023/8/1
2023年6月26日、恩田陸の小説『夜果つるところ』(集英社)が発売された。同作は今年5月に発売されたミステリー・ロマン大作『鈍色幻視行』(集英社)の作中に登場する小説である。著者の「本格的にメタフィクションをやってみたい」という思いから実現した今回の作中小説“完全単行本化”企画は、早くも読書家の間で大きな話題になっているようだ。
『夜果つるところ』は、謎多き作家「飯合梓」によって執筆された幻の小説。これまで何度か映像化の話も出ていた人気作なのだが、いつも撮影中に何らかのアクシデントに見舞われ、計画が頓挫してきた。ある時は撮影のセットが燃え上がる事故が起こり、またある時は撮影中にカメラマンが急逝…。いつしか同作は、“呪われた小説”と呼ばれることに。
『鈍色幻視行』では、そんな『夜果つるところ』にまつわる謎を解き明かすべく参加した、関係者が集うクルーズ旅行での出来事が描かれている。
そして肝心の『夜果つるところ』だが、同作で描かれているのは遊廓「墜月荘」で暮らす“私”の物語。主人公には産みの親・育ての親・名義上の親の3人の母親がおり、そんな“私”がある時、館に出入りする男たちの宴会に迷い込んだところから物語は展開していく。
そこで出会ったのは着流しの笹野、背広を着た子爵、軍服の久我原。なぜか彼らに近さを感じた“私”は、やがておびただしい血が流れる惨劇を目の当たりにする――。
『鈍色幻視行』も発売当初から大反響が巻き起こっていたが、『夜果つるところ』もそれに負けず劣らず話題性抜群の様子。実際にSNS上では、「言葉で言い表せないくらい好きな世界観」「想像以上の素晴らしさ。小説の醍醐味が味わえる」「作家の力量の凄さを感じた」といったさまざまな感想が寄せられていた。
また読者を惹きつけてやまないのは物語だけではない。『夜果つるところ』には、単行本では珍しいリバーシブルカバーが採用されていて、カバーを裏返すと「恩田陸版」から「飯合梓版」の表紙に変わるのだ。
しかもただ著者名が変わるのではなく、カバーのカラーリングまでも反転。著者とデザイナーの思いが詰まった装丁も大きな注目を集めているようで、「これぞ紙の本の醍醐味! 最高じゃないか」「紙の本ならではのカバー仕掛けがカッコ良すぎた」「恩田陸はこういう粋なことしてくるからたまらない」「芸の細かさが素敵。さすが恩田陸…」などのコメントが後を絶たない。
『鈍色幻視行』と『夜果つるところ』はどちらも独立した物語ながら、2冊あわせて読むと作品の世界観をより深く堪能できる。まだ手にとっていない人は、物語はもちろん装丁の仕掛けにもぜひ注目してみてほしい。