45~60歳には資産を取り崩し始め“ゼロ”で死ぬ準備を。「死ぬまでにお金を使い切るのが幸せへの道」と説くお金の教科書

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更新日:2023/7/31

DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール
DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス :著、児島修:翻訳/ダイヤモンド社)

 30代、40代は働き盛りだ。仕事で充実感を覚える一方で、自分を変えたい、新しいことを始めたい、といった欲が出てくるかもしれない。それでも、仕事に時間を取られて、多くの人はなかなか変化を遂げられずにいる。そして、老後の心配もあって、お金ばかりを溜めていく。

DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス :著、児島修:翻訳/ダイヤモンド社)は、アメリカで経済学者、起業家、ニューヨークタイムズ紙などが絶賛しているベストセラー。本書は、お金の「貯め方」ではなく「使い切り方」に焦点を当てた本。本書が提案するメッセージは「ゼロで死ね」ということだ。つまり、人生を最高にするためには、お金を使い切って死ぬ意識をするべきだ、と述べている。

 冒頭では、有名な「アリとキリギリス」のイソップ寓話を引き合いに出している。本書いわく、「キリギリスはもう少し節約すべきだし、アリはもう少し今を楽しむべき」。

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 本書は、ゼロで死ぬために9つのルールを提唱しており、それぞれのルールについて、具体的な考え方や根拠、方法などを述べている。

ルール1 「今しかできないこと」に投資する
ルール2 一刻も早く経験に金を使う
ルール3 ゼロで死ぬ
ルール4 人生最後の日を意識する
ルール5 子どもには死ぬ「前」に与える
ルール6 年齢にあわせて「金、健康、時間」を最適化する
ルール7 やりたいことの「賞味期限」を意識する
ルール8 45~60歳に資産を取り崩し始める
ルール9 大胆にリスクを取る

 先に断っておくと、本書は「お金がまったく必要ない」と述べているわけではない。ターゲットにしているのは「今しかできない経験のために使える金を、無駄に溜めこんでいる人」。ことさら「経験」の大切さを語っている。

 その理由は、まず「老後で何より価値が高まるのは思い出」であり、経験量が人生の豊かさとなるから。そして、もう一つの理由は、経験が人に尽きることのない「配当」を与えてくれることだ。

 本書は経験への投資について、得られるのはそのときの経験の価値だけではない、と述べる。経験を基にして副次的にさらなる経験の価値が得られ、雪だるま式に幸せになれる、というのだ。例えば、楽しかった休暇旅行は、それ自体の価値以外にも、友人に旅行のことを話したり、一人で回想したり、一緒に旅した人と思い出話ができたり、同じような旅行の計画を立てている人にアドバイスできたりする。こういった副次的な価値を、本書は「記憶の配当」と呼んでいる。

 そして、経験への投資は早い段階であればあるほうが良い、と言い切る。金融投資と同じように、経験は年齢を重ねるほどに「記憶の配当」というリターンを生み出すからだ。逆にいうと、死の間際で何かを経験しても、もらえる記憶の配当は少ない、と本書。

 とはいえ、お金を経験に変える重要性がわかっても、やはりお金が減ることには不安を抱いてしまう、という人は少なくないだろう。そんな人に、本書は「行動を取らないことへのリスクを過小評価すべきではない」「リスクの大きさと不安は区別すべき」などのメッセージを送りつつ、同時に、自分の背中を後押ししてくれるツールを紹介している。

 ツールの一つは「死」のカウントダウンアプリ。著者も使っているという「Final Countdown(日本でもダウンロード可)」は、自分の推定死亡日までの日数をカウントダウンできるという。本書いわく、人は死が迫っていないと合理的な判断ができないし、終わりを意識すると時間を最大限に活用しようとする意欲が高まる。そして、もうじき失われてしまう何かについて考えると、幸福度が高まることがある、とも。本書は、「実際のところ、私たちが思っているほど先延ばしできない経験は多い」と述べる。

 人生には「まさに今」しかできないことがたくさんある。なるほど、確かに「何もしない」のは安定でも保留でもなく、失い続けている、という見方があるのかもしれない。

 ちなみに、本書が最も強く訴える「ゼロで死ぬ」ために人生を最適化するよう金を使う場合、大半の人は45~60歳にかけて資産を取り崩し始め、ゼロで死ぬ準備をし始めるべきだそうだ。例えば、65歳になっても資産に手を付けなければ、決して使い切れない金を稼ぐために働き続けることになる、とも付け加えている。

 お金は人生を豊かにするのに必要だ。しかし、お金を貯めるばかりでは人生が豊かにならない。一度立ち止まって人生を見直してみたいという30代、40代に本書をお勧めしたい。

文=ルートつつみ