「紙と鉛筆さえあれば誰でも楽しく絵が描けます」基本の形をおさえ、自分らしく楽しいお絵描きを楽しむ本『馬場のぼるのおえかき教室』
公開日:2023/8/12
ささっとイラストをかける人に憧れた経験はないだろうか。子どもと遊ぶ時、イラストが上手いお兄さん、お姉さんはいつだって一目置かれている。
とは言え、大人になって絵を練習なんてしないし……と思っていたところ、SNSで話題になっていた『馬場のぼるのおえかき教室』(馬場のぼる/こぐま社)を見つけた。幼い頃に誰もが一度は見かけたことのある『11ぴきのねこ』の作者・馬場のぼるさんが、丁寧な語り口で図解を交えて教えてくれる。
元々は1968年に発行されたものの再編集版とのことで、おなじみの「ねこ」をはじめ、さまざまな動物や生き物の描き方が載っている。
夏休みも真っ最中、親戚の子どもたちの人気者になりたい……。ということで、ライターも実際におえかきに挑戦してみた。
やってみると意外とムズカシイ
「紙と鉛筆さえあれば誰でも楽しく絵が描けます」とは帯にある馬場さんのコメント。さっそくトライしてみようと自分なりにねこの絵を書いてみる。
……やはりムズカシイ。足が1本消えかけている。
私自身はこれはこれで味があると踏んでいるものの、ラフに描かれたように見える馬場のぼるさんのイラストがいかに素晴らしいのか身に沁みた。
凹んでいてもしょうがない。
はじめにうすく「きほんのかたち」をかいてから、つぎの順序にしたがって、太い線をかいていきましょう。
とのことなので、まずはきほんのかたちを描き、
すでにこの「きほんのかたち」のデッサンというか、バランスが取れていないような気はするが、とにかく完成形のイメージはできる。少なくとも、先程のように白い紙の前で自分の頭が真っ白になり、なかなかペンが進まない事態は防げた。
さらにお手本を頼りに描いてみる。
だいぶバランスの良いねこちゃんになり、なにやら躍動感が出た気もする。
絵をかくときに、いちばん大切なことは、自分が自分らしい絵をかくということです。
わたしのかいた絵を、そっくりそのまままねしていただくひつようは、まったくないのです。
そんなふうに書いてある。どうしてもお手本の絵の魅力に抗えず、真似したくもなるが、自分なりのエッセンスを入れることも意識しつつ、一生懸命練習してみると徐々に慣れてきた。そして、楽しくなってもくる。
やはり絵はムズカシイ。が、自分のおえかきがふいにいとおしくなる。
11ぴきのねこの作者だけにねこに紙幅が割かれているが、ぶたやきりん、十二支など、他にもいろいろな動物・生き物が例としてあげられている。ねこの表情集は必見だ。
というわけで、ねこのみならず、さらにトライしてみた。
……足が何本なのか若干怪しい動物もいるが(どうやら私は足を描くのが苦手らしい)、今まで描いたことのない動物に挑戦するのは面白かった。
ちなみに、ヘビは干支のコーナーに載っていたのだが、ウシやトラは丁寧なアドバイスがあるのにヘビには全く説明がなく、とりあえずペンタッチを真似してみた次第だ。
久しぶりに絵を描くことに向き合ってみては?
あーでもないこーでもないと試行錯誤していると、ふと気づいたことがある。なんだか気持ちや頭がすっきりしているのだ。
私はこれから、かわいい犬や猫を見たら、絵を描いてみるという選択肢が生まれるだろう。それはきっと素敵な選択肢だ。
ぜひあなたもおえかきを、のびのびと楽しんでほしい。
文・絵=宇野なおみ