私塾の受講料は“怪異の噂”? 金沢の文豪・泉鏡花の少年時代を綴る明治怪奇ミステリー『少年泉鏡花の明治奇談録』が発売!
公開日:2023/8/11
『絶対城先輩の妖怪学講座』や『今昔ばけもの奇譚』など、妖怪を扱った作品を数多く手掛けてきた小説家・峰守ひろかず。最新作となる『少年泉鏡花の明治奇談録』が2023年8月3日(木)に発売され、さっそく読書家の間で話題になっている。
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— ポプラ文庫ピュアフル (@poplar_pureful) August 3, 2023
タイトルにある泉鏡花とは、実在した石川県・金沢出身の文学者。幻想小説の先駆者であり、自ら「おばけずき」と名乗るほどの怪異愛好家でもある。
同作は、そんな彼の少年時代を綴った明治怪奇ミステリー。もちろん作品自体はフィクションだが、収録されている5つのストーリーはすべて泉鏡花の小説がモチーフとなっている。
たとえば第1話のタイトルでもある『草迷宮』は、明治41年(1908年)に発表された作品。「稲生物怪録」として知られる怪談をモチーフにした物語で、「秋谷屋敷」「黒門屋敷」などの廃屋を舞台に、「小次郎」とよばれる法師と青年が数多の怪異に翻弄される様子が描かれている。
一方『少年泉鏡花の明治奇談録』の第1話「草迷宮」で廃屋を調査するのは、もちろん法師ではない。少年時代の泉鏡花(鏡太郎)と、江戸から流れてきた人力車夫の義信だ。鏡太郎は寄宿生でありながら英語の講師もしており、義信はその生徒にあたる。ただ彼は高い受講料を払うほどの財力がなかったため、お金の代わりに“あるもの”を提供することに。そのあるものとは、車夫をしながら見聞きした“怪異の噂”だった。
噂話を教えてくれれば受講料の支払いに猶予を与え、もしその噂が本当だった場合は受講料を免除してくれる――。そんなうまい話に乗った義信は、入塾料代わりにさっそく「黒門屋敷」の噂を語り出す。
かつては威厳ある武家屋敷であり、今は誰も住んでいない黒門屋敷では、立ち入ると必ずと言っていいほどおかしなことが起きるという。怪しいものを見ることもあれば、不思議な音を聞くこともあり、いつの間にか“黒門屋敷は祟られているので入ってはならない”という噂が広まっていったそうだ。
第1話「草迷宮」はその噂が本当かどうか、二人が確かめに行くところから物語が展開されていく。訪れた先では「小次郎」と名乗る老人が黒門屋敷の謂れを語る場面などもあり、エピソードの元ネタとなった作品を知っていると物語をより楽しめるようになっている。
ちなみにエピソードの後にはモチーフとなった作品などを紹介した「鏡花こぼれ話」も掲載されているので、泉鏡花作品に詳しくなくても問題はない。実際に元ネタを知っている・知らないに問わず、多くの人が同作を堪能しているようで、SNS上には「物語を楽しみながら泉鏡花のオリジンや代表作について詳しくなれる」「泉少年のビジュアルが美麗すぎる! イメージも沸きやすいストーリー構成で、読みやすい作品でした」「最近泉鏡花の再履修をしていたこともあって、すごく面白かった。金沢出身の人にはぜひ読んでもらいたい」「物語そのものはフィクションだけど、もしかしたら…を想像させてくれる夢ある一冊だった」などの反響が寄せられていた。
気になる人は、ぜひ一度手に取ってみてはいかがだろうか。泉鏡花やその代表作を知れるいいきっかけになるかもしれない。