豆腐メンタルでも強くなれる! 陸上自衛隊で培った心の鍛え方で、ストレス社会を前向きに生きる方法を伝授
公開日:2023/8/11
ハードワークや家族関係、SNSでのコミュニケーションなど、ストレス要因が多い時代。仕事や私生活をがんばるほど傷つき、幸せを感じられないという人も少なくないのではないだろうか。楽しい人生を送るため、ストレスに負けない自分になりたい――そんな人は、元陸上自衛官・加藤大貴氏が折れそうな心の対処法を伝える『メンタル激よわだった元陸上自衛官が教える病まない自分のつくりかた』(自由国民社)がおすすめだ。
加藤氏は、陸上自衛隊高等工科学校を卒業後、陸上自衛隊で飛翔体を打ち落とす「87式自走高射機関砲射手」に従事。その後、陸上自衛隊中央病院の診療放射線技師として勤めたのち、現在は心理カウンセラーとして活躍している。中学時代に地元の福島県で東日本大震災を経験し、「怖くて何も行動できなかった」という自分を変えたくて自衛官になったバックグラウンドを持つ。
本書で語られるのは、「豆腐メンタル」というほど心が弱かった著者を変えた自衛隊での経験と、そこで学んだメンタル強化術だ。「弱いメンタルを変える日々の習慣」や「心が折れない物事のとらえ方」、「弱った心の癒し方」などの7つのテーマごとに、日々の行動や考え方によってメンタルをケアする方法を伝える。ひとつひとつのトピックは、「反動使い厳禁の懸垂」「耐G訓練」「指導」「台風」といった自衛隊の習慣や、ときにハードで、ときに温かい自衛隊時代のエピソードと共に綴られる。自衛隊高校時代や戦車乗り時代、自衛隊病院での具体的なエピソードは深く心に響き、そのメッセージの重みを増す。そして、厳しく超合理的な自衛隊のあり方がわかる習慣や出来事の数々は、シンプルに読み物として面白い。
また本書の大きな特徴は、メンタルに不安を抱える読者に寄り添って書かれていることだ。著者自身、心の弱さを自覚してきたからこそ、メンタルが弱い人の優しさや繊細さなどの魅力を認めた上で、そのままの自分で強くなれる方法を伝えている。
たとえば第1章の「メンタルが弱くても病まない自分はつくれる」では、心に直接アプローチするのではなく、習慣や行動を変えて前を向く方法を伝える。理想である「望成目標」と必ず達成する「必成目標」を持ち、人生の軸を築くこと。目標を声に出したり書き出したりすることで、心理的な効果が働いて達成に近づけること。第1章のノウハウをひとつ実践するだけでも、立ち止まっている人が一歩を踏み出せるだろう。
不安な気持ちにすぐ対処したい人に役立つのが、第2章の「豆腐メンタルを変えてくれる日々の習慣」だ。ここでは、自衛隊での生活やルールから学ぶメンタル強化術が紹介されている。たとえば著者は、高校時代、真冬でも上半身裸で行われる乾布摩擦の苦痛を仲間との声かけで乗り越えた経験から、前向きになれる朝の習慣が大切だと言う。アロマや音楽、シャワー後のタオルなど、好きなもので、自分のスイッチを作ることを勧めている。また、負傷した隊員のうち誰を救うのかという究極の選択をする訓練の経験から、「正解がないのであれば自分の納得する答えを出せばいい」と語る。自分自身に問いかけ答えを出していくという習慣は、シンプルだが、続けることで自分を変えられそうだ。
日本を守るという重い使命を持つ自衛隊。書かれているエピソードはほんの一部だと思うが、それでも訓練や任務の厳しさに圧倒される。しかし著者が、読者からすると非日常的な自衛隊での経験を私たちの生活に落とし込んでくれるため、腑に落ちる。柔らかく、読者に語りかけるような言葉も心に浸透しやすい。これまでメンタルに関するノウハウ本で納得感が得られなかった人も、弱い心で自衛隊に飛び込んだ当事者が教えるこれらの対処法なら、つらい現状を打破できるのではないだろうか。
文=川辺美希