川で助けようとして死ぬ、転倒して死ぬ、毒で死ぬ、道に迷って死ぬ…。「アウトドアで死なないための危険の事例集」を学び、夏のレジャーを存分に楽しむ

暮らし

公開日:2023/8/15

これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集
これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集』(羽根田治/山と溪谷社)

 夏、山や海などアウトドアへ出かける人が増える季節だ。行く前から楽しみすぎてウキウキして、どんなアクティビティをやるかワクワクし気もそぞろになるところだが、その前にヒヤッヒヤの冷や水を浴びせておきたい。

 アウトドアは危険がいっぱいだ。もしかしたら死ぬかもしれないリスクもある。

「そんなことくらいわかっとるわい!」といきり立たず、まさか楽しむために行った先で死んでしまわないため、間一髪で「死ぬかと思った……」と肝を冷やさないため、どんな死のリスクがあるのかを『これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集』(羽根田治/山と溪谷社)を出かける前に読んでおいてほしい。本書は全4章、53の事例から、どんな“こと”や“もの”で死んでしまうのかを、イラストと当事者の死の顛末、ケーススタディの「死なないためには」の3つで紹介している(いくつか「死にそうになる」という事例もある)。

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 1章は「山で死ぬ」だ。最初に出てくる事例は「転倒して死ぬ」。転ぶのは危ない。「でもそんなの足元がおぼつかない老人でしょ?」などとナメ切っていると酷い目に遭うのが世の常である。もちろん体力や筋力が低下している人の転倒リスクは高いが、その原因のほとんどは「油断」や「不注意」なのだそうだ。若いからといって、油断は禁物である。この他には「風に飛ばされて死ぬ」「夏なのに寒さで死ぬ」「道に迷って死ぬ」などがある。山へ行く方、くれぐれも用心されたし。

 2章は「動物にあって死ぬ」だ。ここ最近話題になることが多いのがクマだろう。クマは臆病な性格だが、至近距離だと我が身を守るために攻撃してくるという。山へ入る時はラジオや笛などで音を出しながら行動すること、そしてとにかく遭遇しないことが大事だという。もしも運悪く遭遇してしまった時のため、本書に収録されている「もっと知っておきたい安全知識」というコラムを読んでおくことを勧める(襲ってくるクマへの対応策はなかなかハードだ)。この他には「ダニに咬まれて死ぬ」「ダツに刺されて死ぬ」「カタツムリやナメクジに触って死ぬ」などがある。危険な生き物に出くわしてしまう前に、ぜひ予習を。

 3章は「毒で死ぬ」だ。ここには「有毒植物を食べて死ぬ」「アオブダイを食べて死ぬ」などがある。夏だと釣りや磯遊びなどの際は細心の注意を払いたいものだ。そしてこれから先の味覚の秋には山菜やキノコ採りも油断できない。とにかく危なそうなものはおいそれと口に入れない、無闇に触らない、素人考えは捨てる……これが鉄則である。

 4章は「川や海で死ぬ」だ。ここでなんとしても避けたいのは「助けようとして死ぬ」だろう。これはもう毎年ニュースで見る。これを避けるにはどうしたらいいのか。とにかく水辺はライフジャケット必須である。その他に気をつけることも多々記載があるので、助けようとして死ぬことを避けたい人はぜひ本書を読まれたし。この他には「飲酒して泳いで死ぬ」「離岸流で死ぬ」「シュノーケリング中に死ぬ」などがある。川や海へ行く方、自分の泳力に過信は禁物である。

 もちろん怖がってばかりでは、楽しいレジャーは望むべくもない。だが時に自然の脅威は人知を超えることがあり、浮かれた人間はミスを犯す。しかし考え得るリスクを極力排除すること、そして安全に関する知識や知見は必ずやあなたの強い味方になる。ということでこの夏の、そしてこの先のシーズンにも必携の死なないための入門書、“転ばぬ先の一冊”をぜひ味方につけてほしい。さらに深く知りたい方は、巻末の関連書籍を熟読されたし。そしてお出かけ前は、どうか十分な休息を。本書を熟読しすぎて寝不足にならないことにもどうかご注意を。

文=成田全(ナリタタモツ)