数々の敵を倒してきた戦士が最も恐れるダンジョン「赤き洞窟」の正体とは?/3分間ミステリー らせんの迷宮3③
公開日:2023/8/25
『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー らせんの迷宮』(黒史郎/ポプラ社)第3回【全16回】
1話2~3ページの短い物語を読み、その中の”かくされた意味”を考える『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー』シリーズ。物語を読み終わったら想像力を巡らせ、解説ページで答え合わせをするのがこのシリーズの楽しみ方! 今回の連載ではシリーズのなかでも人気の4冊から、それぞれ4つの物語をご紹介します。やさしいものから大がかりなトリックが仕組まれたものまで、あなたは物語の真の意味にたどり着けるか?
赤き洞窟
とうとう、この日がきてしまったか……。
ここまできたら、もう後戻りはできない。覚悟を決めるしかない。
これまで、数々の高難度のダンジョンを踏破してきた。
そんなオレが、この《赤き洞窟》だけは避けてきたのだ。
この洞窟は人跡未踏。今まで誰も入ったことがない。
だから奥に何様がいるのか、誰も知らないのだ。
もちろん、なにも脅威となるものはないかもしれない。
それがいちばん、望ましいことだ。
だが、あの《怪物》が巣を作っている可能性もある。
そいつは、この世の絶望の集合体。
それと出あっただけで人は精神を破壊されるという。
オレはこわかった。
だが、いつまでも目をそらしているわけにもいかない。
この洞窟が安全かどうか、すみずみまで調べなくては。
大丈夫。オレは、あの邪竜王サドネスを一人で倒した戦士じゃないか。
勇気を出せ。
ようやく、洞窟の中に踏み込む。
小さな灯りで闇をけちらし、血のような色の洞窟を進んでいく。
奥へ行けば行くほど不安が増していく。
今にも何かが現れそうな不吉な予感にオレの精神は削られていく。
もし、あの《怪物》がいたら──オレはどうしたらいい?
「大丈夫ですから。落ちついて」
その声にオレはうなずく。
そうだ。邪竜王を倒した時と今では、明らかに違う。
何かと遭遇しても、オレは一人で戦うわけじゃない。
すぐそばに、こんなにもたのもしい仲間がいるじゃないか。
どんなものと遭遇しても彼なら、その術でなんとかしてくれる。
こうして、オレは仲間に励まされながら、《赤き洞窟》のいちばん奥へ到達する。
「よかったですね。悪いものはなにもありませんでしたよ」
その言葉で、オレはやっと救われた気持ちになった。
今は早く帰って、ゲームがしたい。