禁じられた村の”お屋敷”でかくれんぼ。少年がかくされた理由とは?/3分間ミステリー 3つのトリック1⑤

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/27

『かくれんぼ』にかくされた意味

「もういいかーい」「まーだだよー」

 ずっと、「まだだよ」といわれてしまえば、鬼は動けません。

「かくれんぼ」は始められないのです。

「ぼく」とミツルとヒロシは不思議でした。

 三人で声を合わせて、「「「もういいよー」」」と返したのに、鬼のタケルがまったく探しに来ないからです。

 でも、仕方がなかったんです。

 だって、タケルには三人の声が届いていなかったのですから。

 お気づきでしょうか。

「まーだだよ」と返している人数が、増えていることに。

 一人なら「まーだだよ」。

 二人なら「「まーだだよ」」。

 三人で返せば「「「まーだだよ」」」。

 でも。

「「「「「「「マァダダヨオオオ」」」」」」」

 これは明らかに三人以上の声です。

 この日、タケルは三人を探しに来ることはありませんでした。

 それから十年、二十年と経ち、その頃を懐かしむくらい時間が経ってしまっていますが、タケルはまだ、姿を見せません。

 今も「まーだだよ」といわれて、かくれんぼを始めることができないのでしょう。

 自分がかくされてしまったことにも気づいていないのかも。

 なぜ、タケルだけが消えたのでしょうか。

 彼は自分が「かくされた意味」に気がつけたのでしょうか?

<第6回に続く>

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