面白い話が大好きな国王。彼を怒らせてしまった吟遊詩人は、誰?/3分間ミステリー ゆらぎの物語2⑩
公開日:2023/9/1
「お なしずきのまおう」にかくされた意味
さて、火あぶりにされたのはどちらの詩人だったのでしょう?
物語のはじまりを見るかぎり、やせた詩人のほうがおもしろそうな気もしますが……。
しかし、火あぶりにされたのは、やせた詩人のほうでした。
どうしてでしょう?
ヒントはずばり、題名に書いてあります。
「お なしずきのまおう」
魔王は「はなし」が好きといわれています。
これにはふたつの意味があって、物語=「はなし」が好きだということと、「は」がなし、「は」がないのが好き、という意味だったのです。
なぜか魔王は昔から「は」が嫌いで、たとえ、おはなしの中でも「は」を使われると頭にきてしまうのです。
それに気づかなかったやせた詩人は短い語りの中で、なんと七カ所も「は」を使ってしまいました(『ば』を入れれば八カ所も!)。
太った詩人のほうは魔王の「よく来たな、ふたりとも。わたし、おもしろい物語が大好きだ」という言葉を不自然に思い(普通なら『わたしはおもしろい物語が大好きだ』と言うところです)、魔王が「は」が嫌いなことに気づいたのです。
そして、たくみに「は」を使わずに語り、無事に宝を手に入れることになるのでした。
<第11回に続く>