深夜の路地裏での取引。男のポケットから出てきたものは?/3分間ミステリー 真実を知るのは誰?4⑯
公開日:2023/9/7
『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 真実を知るのは誰?』(緑川聖司/ポプラ社)第16回【全16回】
1話2~3ページの短い物語を読み、その中の”かくされた意味”を考える『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー』シリーズ。物語を読み終わったら想像力を巡らせ、解説ページで答え合わせをするのがこのシリーズの楽しみ方! 今回の連載ではシリーズのなかでも人気の4冊から、それぞれ4つの物語をご紹介します。やさしいものから大がかりなトリックが仕組まれたものまで、あなたは物語の真の意味にたどり着けるか?
相場
深夜。
人通りのとだえた、繁華街の裏路地に、黒いスーツを着た眼光の鋭い男が立っていた。
五分ほどして、若い男がきょろきょろと落ち着きのない動作で、あたりを見回しながらあらわれる。
若い男は、黒スーツの男を見ると、ホッとしたように近づいて、
「あの……」
と声をかけた。
「ここにきたら、あれを売ってもらえるって聞いたんですけど……」
「あれってなんだ?」
黒スーツの男は、たしかめるように言った。
「いやだなあ。あれですよ、あれ」
若い男はへらへらと愛想笑いを浮かべて言った。
「ドラッグです。吉田の兄貴の紹介なんですけど……」
「ああ……」
黒スーツの男は納得したようにうなずいた。
「それで、どれくらいほしいんだ」
「そうっすねえ。おれ、初めてで、あんまりよくわかんないんですけど……百グラム買ったら、相場はどのくらいなんですか?」
「初めてで百グラム? そうだなあ……まあ、懲役二年、執行猶予三年ってとこかな」
黒スーツの男はそういって、内ポケットに手を入れた。