世界を旅する絵本(2023年8月 新刊&おすすめ絵本)

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/22

ぽっかりと夏空に浮かぶ雲を眺めていると、「ここではないどこか」へ想いを馳せたくなるものです。

人間は、移動や旅と切り離すことができない生き物です。いまの人類(ホモ・サピエンス)がほかの大陸に移動をはじめたのは、およそ12万年以上も前のこと。種を残すため、災害から逃れるため、好奇心を満たすため、さまざまな目的で旅をしてきました。旅への憧れは、古より人間のDNAに刻まれているのかもしれませんね。

夏休みは旅行だけでなく、ご先祖さまを偲ぶお盆や、戦争について触れる機会も多い季節。非日常に接する機会が多いこのタイミングにこそ、世界を旅する絵本を味わってみませんか? 物理的な移動以外に、自分の内面へ潜っていくことや、過去や歴史を知り未来を想像することも、立派な旅のひとつです。

ご紹介する本を、旅の案内人としてお頼りください。お子さんにとって今は難しい内容でも、年齢が上がるにつれて理解できる部分が増えれば、いつしか手を取り合って、自分だけの新しい世界をひらいていける頼もしい一冊となることでしょう。

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人類、動物、鳥……生きている限り、前へ進み続ける私たち。美しいビジュアルと壮大なスケールで万物の旅をたどった『旅するわたしたち On the Move』

旅するわたしたち On the Move

作:ロマナ・ロマニーシン アンドリー・レシヴ 訳:広松由希子

みどころ

400万年前、2本足で立ちあがり、歩き出してから、私たちは一歩、また一歩、何万年も旅してきた。

くつをはき、スキーやカヌーが発明され、他の大陸に移動し、気候の変動や災害などを理由に旅に出て、定住しない人たちもあらわれた。陸の上を、水の中を、空をわたって。

その目的もさまざま。知らない場所へ、自分だけの道をもとめて。海の底から世界のてっぺんまで、あるいは地球の果てまで。さらに遠く、未知の宇宙へと旅を続ける。時には迷い、方向を変え、自分を見失いそうになりながら。私たちは旅をする。地図やコンパスもなしに移動する生きものたちもいる。

新型コロナウィルス感染症が世界中にまん延し、人々の行動が制限された2020年にウクライナで刊行されたこの絵本。万物の行動原理である「動く」ことをテーマに、「移動」や「旅」「冒険」を、歴史や文化、人類の進化をたどりながら、壮大なスケールの物語を美しいビジュアルで見せてくれます。

新しい世界、出会い、自由。これは、一人ひとりが生みだしていく、自分だけの物語でもあるのです。私たちは旅を続けます。いつか懐かしい風景が見えるまで……。

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『この計画はひみつです』砂漠の町に、ある計画のため集められた科学者たち。アメリカで原子爆弾が作られるまでを描いた絵本

この計画はひみつです

文:ジョナ・ウィンター 絵:ジャネット・ウィンター 訳:さくまゆみこ

出版社からの内容紹介

ニューメキシコの砂漠の名もない町に、科学者たちがやってきました。
ひみつの計画のために、政府にやとわれた科学者たちです。
計画は極秘とされ、だれひとり情報をもらしません。
思いもよらないものが作られているにちがいありません。
もうすぐ完成しそうです。
時計の針がチクタクと時を刻み……

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世界でたったひとつの「きみだけのものがたり」を書くために。自分の内側へと旅するように読む『ものがたりが うまれるとき』

ものがたりが うまれるとき

作:デボラ・ホプキンソン 絵:ハドリー・フーパ― 訳:せなあいこ

みどころ

ものがたりを かこう!

準備するのは、えんぴつを一本か二本。おっきなけしごむとえんぴつけずり、おやつもちょっぴり。それから、目も耳も鼻も指もあこがれの気持ちも、全部使う。

ものがたりを生み出すのは、簡単なことじゃない。何も浮かんでこなくて、時間ばかりがたって、時にはなげだしたくなることもある。けれど、あきらめないで、もういちどえんぴつをにぎってみる。世界でたった一つの「きみだけのものがたり」をかくために。

ゴールデン・カイト賞を2度受賞し、ストーリーテラーとして評価の高い作家デボラ・ホプキンソンが描き出すのは、「生みの苦しみ」と、それを切り抜けるためのアイデア。

なにかを生み出そうとした時。それが大変な作業だということは、一度でも経験したことがある人ならわかるはず。絵本の中に登場する「きみ」も、言葉が出てこなくて、紙の山ばかりが大きくなって、他の人が書いたものがたりを読んで楽しみ、あきらめそうになる。でもきみは、あることに気づき……。

抽象的なことに挑戦しているようで、その取り組み方や、考える方法の描き方はとても具体的。だからこそ、この絵本を読んではげまされる子どもたちや、勇気をもらう大人も多いことでしょう。その一歩をふみだしたなら、きっとどこかへつながる道があるはず。巻末には、さらに詳しくアイデアを形にするためのヒントも書いてありますよ。

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気鋭の冒険家がロバやラクダとの旅を綴るノンフィクション児童書『自由を求めて冒険へ! 動物たちとの4千キロ冒険記』。生きづらさを抱える子どもたちに勇気を贈る冒険譚

自由を求めて冒険へ! 動物たちとの4千キロ冒険記

著:春間豪太郎

出版社からの内容紹介

新進気鋭の冒険家・春間豪太郎氏による小学校高学年~中学生向けの待望の児童書!

第1章 モロッコで行商人にあこがれ冒険!
第2章 キルギスで勇者をめざして冒険!
第3章 チュニジアで砂漠を自由に冒険!

〝動物と一緒に野宿旅〟という前代未聞の冒険(リアルRPG)を続ける春間さん。
しかし、その道中は難敵ぞろい。

モロッコでは暴れん坊のロバと前途多難の野宿旅!
キルギスでは羊と犬と一緒に極寒の山で遭難!?
チュニジアではラクダに乗ってしゃく熱の砂漠を横断!

次々と襲ってくるトラブルを動物たちと乗り越えていけるのか…?

周りとなじめずに悩んでいる子どもや他の子どもとは異なる特性をもつ子どもたちに生きるヒントを与える、ワクワクドキドキの感動ノンフィクション。

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リズミカルな「ロンドン橋のうた」を2ヶ国語で楽しもう。谷川俊太郎の翻訳と繊細な絵。『英日CD付 英語絵本 ロンドン橋が おっこちる!London Bridge Is Falling Dawn!』

英日CD付 英語絵本 ロンドン橋が おっこちる! London Bridge Is Falling Dawn!

絵:ピーター・スピア 訳:谷川俊太郎

出版社からの内容紹介

つくってはながされ,なんどもかけ替えられたロンドン橋。だれもが聞いたことのある「ロンドン橋のうた」をピーター・スピアが描いた繊細な絵とともに楽しめます。
新しい日本語訳は谷川俊太郎さん,音楽は谷川賢作さんです。リズミカルな英語と日本語をお聞きください。英語の歌も収録。
英語絵本1冊に,CD1枚(英語日本語交互,英語のみ,歌1曲収録)と日本語対訳ガイド付属。

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【動画公開中】夏休みに広がる世界 絵本・児童書21選

文:栗田奈緒子 編集:木村春子