「普通はこうなのに」の「普通」って?社会学者の著書で日本的「同調圧力」の問題点を学ぶ1冊

社会

公開日:2023/9/1

10代から知っておきたい あなたを丸めこむ「ずるい言葉」
10代から知っておきたい あなたを丸めこむ「ずるい言葉」』(貴戸理恵/WAVE出版)

日本的な同調圧力はマイノリティも排除する

 聞かれた質問に真面目に答えたら、「真面目か!」とツッコまれて笑われる。

 教授から受けた理不尽な仕打ちを友達に相談したら、「世の中そういうものでしょ」と取り合ってもらえない。

 イジメに近い友達イジりをしている友達を注意したら「ノリ悪!」と逆ギレされる。

 おかしな校則の改訂を学校に提案しようとしたら、「どうせ無駄だからやめときなよ」と冷たく諭される……。

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 これは『10代から知っておきたい あなたを丸めこむ「ずるい言葉」』(貴戸 理恵/WAVE出版)に登場した”ずるい言葉”の実例だが、同じような言葉を聞いたことのある人は多いのではないだろうか。

 こうした言葉をぶつけられた人は、「自分の思ったことを口に出しちゃいけないのかな」「辛いことがあっても、周りの人が我慢しているなら自分も我慢しよう」と思うようになるだろう。

 本書『10代から知っておきたい あなたを丸めこむ「ずるい言葉」』(貴戸理恵/WAVE出版)が批判的に論じているのは、そうした場面で働く「同調圧力」だ。

 そして同調圧力により「異質な存在が排除されること」を強調しているのも本書の特徴。「同調圧力の強い社会は、多様性を認めずマイノリティを排除する不寛容さと表裏一体です」との言葉もあった。

「多様性」という言葉が連呼されるようになっても、ここ日本でマイノリティの権利が十分に認められていない背景には、こうした日本的な同調圧力が深く関係しているのでは……と本書を読んでいて感じられた。

同調圧力に抗うことで社会も変えられる

 なお著者の貴戸理恵氏は社会学者であり、「同調圧力」の分析には社会学の理論があり、同様のテーマに関連する書籍も数多く紹介される。そのため本書では「こうしたズルい言葉にどう対処すべきか」の助言だけでなく、「ズルい言葉」が社会で広く使われている背景や、社会への影響の分析も広く行われる。

 10代が読めるように書かれた本ではあるが、大人が読んでも非常に勉強になる内容なのだ。

 そして本書を読めば、「自分の行動で同調圧力を引き下げること」の社会的意義も学ぶことができる。

「普通はこうなのに」の「普通」って何?
「みんなが迷惑しているよ」の「みんな」って誰?

 本書の読者がそう問い直して、同調圧力に抗うすべを身につけることは、自分の生きづらさを解消するのみならず、社会を変えることにもつながっていくのだ。

文=古澤誠一郎