日本人が歯を失う原因 第1位は「虫歯」…ではなかった!読むと歯を大切にしたくなる、歯科医療漫画『デンタルクエスト』
公開日:2023/9/2
飲み会帰り。ほろ酔いで帰ってくると、僕はいつも「歯を磨くの面倒だなー、このままベッドに入って寝てしまいたい…」という怠惰な自分と格闘する。心の中で数分闘った結果、虫歯になる方が嫌だからと言い聞かせて歯磨きをするのだが……こんな僕と同じように歯磨きを面倒に感じる人は多いのではないだろうか。少なくとも歯磨きを面倒だと思ったことは誰しもあるはず。
そもそも歯磨きはなぜ大切なのか。正直なところ、僕は『デンタルクエスト』(セキアトム:原作、箸井地図:漫画/集英社)を読むまではちゃんとわかっていなかった。人には「歯磨きって大事だよね」なんて言いつつも、だ。本書は、そんな人に歯を大切にする重要性をわかりやすく教えてくれる漫画である。
物語の主人公は歯科衛生士・歯守リンゴ。彼女は最近までアメリカとスウェーデンに留学しており、歯科衛生士として働ける職場を探していた。そこで偶然にも「田名井歯科」の受付・東雲道子と出会い、歯科医・田名井桜司のもとで働くことになり、訪れる患者の歯を丁寧に治療していくストーリーだ。物語の構成としては、非常にシンプルでわかりやすく誰でも読みやすいと感じるだろう。ただ本作の魅力はそこではない。歯の知識や僕らにとってためになる話がそこかしこにちりばめられている点にある。
たとえば、日本人が歯を失う原因の第1位は「虫歯」ではなく、細菌の感染によって歯の周りの歯ぐきや、歯を支える骨などが溶けてしまう「歯周病」であることをあなたは知っていただろうか。要因には、睡眠不足やストレスによる免疫低下や無自覚の歯ぎしりなど、現代人の多くが当てはまりそうなものばかりが挙げられ、痛みがなく進行する特徴から「サイレントキラー」という別名があり、気づいたときには抜歯しか選択肢がない人が多いことも。想像するだけでもゾクッとする。
また作中には、無傷の歯より治療によって削られ銀歯など被せ物がある歯の方が、歯垢がたまりやすく虫歯の原因となる菌が増えやすいという話や、2週間以上治らない口内炎は他の病気が隠れていることなども描かれている。治療が済んだから、大したことないからと放っておくのではなく、これまで以上により丁寧なケアを心がけ、何かあればすぐ検診を受けることが重要だということがわかる。
その重要性を説くため、作中ではリンゴが患者に対して厳しいことを言うシーンが描かれる。それはきっと大人の歯は失ったらもう二度と生えてこないこと、またそれが人の生活にどれだけの不便さを与えるのかを知っているからだ。彼女が放つ言葉の数々は、歯科業界で働く人たちの願い、思いが込められているといっても過言ではないだろう。
では具体的に何をすればいいの?と思うだろうが、安心してほしい。ケアの方法や定期検診の目安など、作中でかなり具体的に紹介されている。本書を読めば、これまでの自分のケア方法を見直すいい機会になり、歯のケアの重要性がより深く理解できるはずだ。いつまでも自分の歯で美味しいものを食べたいすべての人におすすめしたい一冊だ。
文=トヤカン