SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第26回「ホストに行く」
更新日:2023/8/27
プロはすげエ。
話が上手いこと、視野の広さなんかに感動したことはもちろんなのだが、何が一番すげエと思ったのかというと、そう。
雰囲気、だ。
いや待て、雰囲気て。総括が弱いのに加えて漠然とあんた堂々と、雰囲気て。っていうか、そもそも人に話せるような体験や経験はどうなったんだい、とそう思われても仕方がない。もう後で揉めたりするのが嫌なので予め言っておくが、そんな体験や経験は出来ませんでした。すみません。持ち帰ったのは「ホストに行ったことがある」というさして珍しくもない事実一つだけです。まアなんというかこれは仕方ないよね、もう私が開き直ってるから諦めて下さいね。
でも。漠然としたものに聞こえる「雰囲気」。これに関しての自分なりの考察をこの日を体験、経験した事によってある程度まとめることが出来たので、一旦その説明を聞いて頂きたいです。いきますね。
人が外的に向けて放っている雰囲気とやらの正体は、その人の持つ様々な能力の平均値と、それの中にある最低値だと私は思う(何か一つが人智を越えて究極に特化している人は別枠)。学力、容姿、判断力、視野、行動力、経験値、想像力、そして自信。もっとたくさんあるし、細分化も出来るが、これらの総合的な能力を均したものと一番低い能力が、その人の「雰囲気」だと、そう思う。
平均値に関してはそのままなので説明は省くが、実は最低値、その人の中で最も秀でていない部分が、その人の印象を左右する基盤にもなりかねないと感じているのだ。どれだけ多岐に渡って優れていようが、劣っている部分はものすごく目に付きやすいし、人に感じさせやすい。わかりやすく見えるところや行動に出ている人はもちろん、それの正体がなんなのかわからなかったとしても、最低値は隠しきれずに滲んでしまう気がする。
わかりやすく体を表す平均値と、実は根幹になりうる最低値。
平均値が建物そのもの、最低値が立地で日当たり、ってそんな感覚。
見てくれは滅茶苦茶に良いのにどうにもパッとしなかったり、ものすごく人当たりは良いはずなのに周りに人が少なかったり。潜在的に人に、んんっ、って感じさせてしまう部分は、建物自体よりも、立地、日当たりの要因がでかいと、私はそう思う。
以上。というのが、主観をふんだんに含んだ私の考察でした。
だから代表やオーナーのように雰囲気で、すげエ、って思わせるっていうのは、文字通りすげエ。細部に至るまで、あらゆるところの底上げがしっかり出来ていないと叶わないことだと私は思っているよ。
こんな具合。だからまア「雰囲気がすげエ人」は「歌舞伎町生まれの人」なんかよりも出会うのが難しいよねって、そんなことを思った一日でした。
ちなみに体験、経験で唯一言えるとしたらシャンパンコールなるものをやってもらった。十人以上のキャストに囲まれ、凄い早口で捲し立ててもらい、絶妙なタイミングで幾度も乾杯した。なんて言ってるのかは正直一言も聞き取れなかったけど、あの勢いであのグルーヴは、長くやってるバンドでもなかなか出せないと思った。なんか、もう、プログレだったね。うん。
しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。さらに2024年6月2日の東京・日比谷野外音楽堂を皮切りに、大阪、山梨、香川、北海道、長崎を巡る初の野外ツアー「都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜」(追加公演<ウミ>、<モリ>)開催。現在「都会のラクダ TOUR 2024 〜 セイハッ!ツーツーウラウラ 〜」を開催中。
自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中