「顔色をうかがってしまう」「人付き合いが苦手」と感じるあなたへ。わたなべぽんさん最新作から、大人の友達との付き合い方を学ぶ

マンガ

更新日:2023/9/21

 大人になればなるほど、自分を変えることが難しくなっていく。だめなところを自覚していても、まわりにいるのはそれを許してくれる人だけ。合わない人とは距離を置くことをくりかえして、気づけば話す相手は家族だけ……という人も多いのではないだろうか。それで十分、という人はもちろん、そのままでいい。でももし、もうちょっと人付き合いがうまくなりたい、今一度世界を広げたい、という人はぜひ、わたなべぽんさんのコミックエッセイ『人見知りの自分を許せたら生きるのがラクになりました』(KADOKAWA)を読んでみてほしい。

 人見知りで、親しい友達が相手でもうまく言葉を返せないことが多いわたなべぽんさん(以下、ぽんさん)。仲良くしていたはずの相手とも、いつのまにか上下関係が生まれてしまうことが多いという。そんな相手にぽんさんも苛立ちながら、やっぱりはっきり言えなくて、自然と距離をとってしまうことのくりかえし。気づけば連絡をとる友人は3人。フリーランスの自宅仕事だから、夫以外とは誰とも話さない日も多い。ところが、40歳を過ぎて初めてチャレンジしたひとり旅で、久しぶりの「友達」を得たことで、彼女の日常は変わっていく。

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人見知りの自分を許せたら生きるのがラクになりました

 ぽんさんとは真逆の「友達」に誘われて、自然と交友関係が広がったというのもあるけれど、読んでいてすごいなと思うのは、ぽんさんが自分のネガティブな部分に一つひとつ向き合って、気づきを得て、改善していくことだ。たとえば、初対面の人だらけの飲み会で、いろんな人から言われた言葉を、思い込みでよくない方向に解釈し、勝手に落ち込んでいたこと。上から目線でしゃべってくる昔からの友人に対しては、間をうめるために、みずから自虐ネタをふるのが癖になっていたこと。調子のいい人に対する苦手意識は、一方的な偏見に基づいていたこと……。

人見知りの自分を許せたら生きるのがラクになりました

人見知りの自分を許せたら生きるのがラクになりました

 そんな自分を「こういう性格だからしょうがない」と諦めてしまう人がほとんどなんじゃないだろうか。もちろん、性格を根本的に変えることなどできないし、気を遣ってしまう自分はやめられない。けれどぽんさんは、その気遣いがときに過剰であることに気づいて、できることから一つずつ、変わろうとしていく。そしてそれは、決して、他者におもねるためのものではない。なんで自分はこうなんだろう、と思わずにいられる、ほんの少しでも今の自分を好きになるための、大切な一歩なのである。

人見知りの自分を許せたら生きるのがラクになりました

人見知りの自分を許せたら生きるのがラクになりました

 そんなぽんさんに「人の顔色をうかがいすぎてしまう性格だからこそ、自分は助けられた」と言ってくれる友人が現れたとき、胸がじーんとしてしまった。弱点だと思っていたものが美点として発揮されるようになったのは、きっとぽんさんが自分に胸を張ることができたから。

 ぽんさんは、やがて気づく。「自分にも素敵な友達がいたらなあ」と思うことはたびたびあったけれど、それは「誰か私の人生を楽しくして!」と言っているようなものだった。友達に楽しくしてもらうのではなく、楽しいことをしているから友達ができるのだと。そんなぽんさんの日常は、友達といるときも、ひとりでいるときも、きっともう、さみしくはない。

文=立花もも