SNSで大反響! クリエイター夫婦が提案する「子どもをクライアントと思ってみる」という子育てアイデア集
公開日:2023/8/30
子育てのあんな悩みやこんな悩みについて「その手があったか!」というアプローチを提示してくれる『子育てブレスト』(佐藤ねじ、佐藤蕗/小学館)は、クリエイター夫妻が、ふたりの男の子を育てる中で実践してきたノウハウを凝縮させたアイデア本です。
SNSで反響の大きかったアイデア8選と、タイミング別(0歳から小学5年生まで)の全7章から本書は成っていますが、67あるアイデアから早速いくつかご紹介しましょう。
・車窓忍者…電車やバスに忍者が描かれた紙などを持参して車窓を背景にぴょんぴょん飛び跳ねさせる動きを自分でつける。
・電車ヨガ…電車で子どもが静かにするように、静かにすること自体をゲームにする。
・つまみ食いレストラン…イヤイヤ期でご飯を食べない子に食べさせようとするのではなく、つまみ食いすることをゲームにして無理なく色んなものが口に入るように仕向ける。
複数名が集まってアイデアを出し合っていくブレスト(ブレインストーミング)というビジネスでもおなじみの言葉が題名に入っている通り、本書は「仕事の手法で育児に向き合ってみる」「子どもをクライアントと思ってみる」ということをテーマにしています。どうやったらチームや個人の仕事がうまくいくかという、マネージメント、コーチング、ティーチングの観点。どうやったら誰もまだやったことがない領域にたどり着けるかというハック(拡張)の概念。直接的な指示を投下するのではなく、ゲームやワークショップで導入と浸透を試みる。そういった、ビジネスにおける考え方を子育てに転化・応用するということです。
たとえば、子どもがギャン泣きしているところを撮影し、その動画を泣いている本人と一緒に鑑賞したり加工したりして遊ぶ「イヤイヤ動画鑑賞」のアイデア(3~4歳の章)は、仕事の場にたとえるならば「オン・ザ・ジョブ・トレーニング(現任訓練)」を撮影して、トレーニングした本人と上司が成果を振り返るようなスタイルです。
「ねぇ見て。○○くんすごい顔してるよ!」と言って、次男が変な顔をしているシーンを停止してみたり、でっかく開いている口の部分の画面を拡大したりします。ほかにも再生スライダーを動かしてスローにしたり、逆再生と再生を繰り返してみたり。すると、子どもは笑顔に! そのうち「自分で動かしたい!」と言い出したら、しめたもの。
小学1~2年生の章に載っている「ひらがな採集」は、著者の子どもが済ませたひらがなの書き取り宿題を見て、最後のほうに飽きが来たのか「やっつけ」になってしまっているのがもったいないと思い、ひらがなの魅力を伝えるために考案されたアイデアです。漫画のコマや絵本に書かれている「そ」をトレーシングペーパーに写したり、市販品の商品パッケージから「そ」だけを切り抜いて採集して比較したり、「何の商品の“そ“か?」とクイズを出し合うスタイルです。
「みそラーメン」の「そ」や「そばぼうろ」の「そ」など、それぞれ形が違うことを発見して、長男も驚いていました。こうした方法で、書き取りの宿題をこなすだけだった長男のひらがなへの興味を、少しは補うことができたかなと思います。
斬新なアイデアがまとめられた本書ですが、それらは「これさえ覚えておけば大丈夫」というものではなく「1、2回は使えるかも」「いつもこれをやるわけじゃない」というスタンスで紹介されています。著者夫婦も、子育てにおいて年がら年中斬新さを心がけておらず、いつもうまくスマートにいっているわけではないと説明しています。子どもも親も楽しくてホッと一息つくことができる瞬間が、家族の時間の中に少しでも増えればという願いがこもっている一冊です。
文=神保慶政