2023年9月8日公開!『劇場版 シティーハンター天使の涙(エンジェルダスト)』原作・北条 司 インタビュー

マンガ

公開日:2023/9/6

劇場版 シティーハンター天使の涙
©北条司/コアコミックス・「2023 新劇場版シティーハンター」製作委員会

※この記事は『ダ・ヴィンチ』2023年9月号の転載です。

 冴羽獠とその仲間たちが、4年ぶりにスクリーンに帰ってきた!新宿を舞台に繰り広げられるシティーハンターの物語が、〈最終章〉に向けて動き出す――。

 1985年の連載開始以来、マンガ・アニメ・実写化と様々な形でその世界を広げている『シティーハンター』。4年ぶりとなる待望の劇場版公開を受けて、原作者である北条司先生にお話を伺った。

取材・文=東田俊

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 劇場版『シティーハンター』が、2019年以来、4年ぶりに帰ってきた。前作はプロットに北条氏の修正が入ったというが、今回はどうだったのだろうか。

「今回は微調整だけで、僕はずいぶん楽をさせてもらいました(笑)。新キャラに〝アンジー〟という外国人女性が登場するんですが、シティーハンターの歴代依頼人の中で、一番〝かわいそうな〟依頼人かもしれませんね」

劇場版 シティーハンター天使の涙
©北条司/コアコミックス・「2023 新劇場版シティーハンター」製作委員会

 そのアンジー、告知で確認できる髪型はショートカットだが、当初はロングヘアの予定だったという。「前回の映画で、金髪の女性がXYZ(シティーハンターに依頼するときのキーワード)を書いていました。あそこから繋げたいという狙いだったんだと思いますが、脚本を読んだら、『いや、この子の髪は短いだろう』と感じて。それで、僕がシナリオから受けた印象を『これでどうですか』とスタッフに提案したんですよ。でも、ズルいですよね。原作者がそんなこと言ったら(笑)」

 前作に引き続き、『キャッツ♥アイ』の来生三姉妹も登場する。「海坊主(伊集院隼人)が店長をしている喫茶店のオーナーが実は……っていうね。ふたつの作品は世界観が全然違うんだけど、アニメーションというマンガとは違うフォーマットですし、こういう展開もアリなんじゃないのかなと思っています。やっぱりスクリーンでやるわけだし、盛大な〝お披露目会〟として、多くのファンの皆さんに楽しんでもらいたいですから」

劇場版 シティーハンター天使の涙
©北条司/コアコミックス・「2023 新劇場版シティーハンター」製作委員会

映画は「わかりやすい」ことが何より重要

 北条氏自身、「マンガとアニメでは大きく違う」と考えている。

「いま、自分が新しい『シティーハンター』のストーリーを書いても、考え方や表現の方法などが変わってきているので、皆さんが思っている〝冴羽獠〟は出てこないかもしれません。〝あの頃〟の『シティーハンター』を知っている人たちが、アニメというフォーマットで作ってくれたほうが、求められている作品になるんじゃないかと思います。神谷さんをはじめ、主要キャラの声優さんたちはずっと変わらずで、今回も本当に頑張っていただいています。マンガは、色がなく動きもなく音や音楽もない不自由なメディアですので、読者の想像力に頼りながらも、できるだけわかりやすく伝わるように工夫をしてきました。映像はそれよりもはるかに優っているメディアですので、だからこそ、『伝わらないと意味がない』っていうふうに思っちゃうんです。たまに複雑な構成の映画を観ていて、『何でこうするんだろう?』っていう疑問が残って、途中から楽しめなくなっちゃうんですよね。今回の作品はちゃんと〝わかりやすい作品〟になっていると思います」

劇場版 シティーハンター天使の涙
©北条司/コアコミックス・「2023 新劇場版シティーハンター」製作委員会

カミさんが面白いと言ってくれたらそれでいい

 連載が終了しても、国内外で根強い人気を誇る『シティーハンター』。冴羽獠をはじめとするキャラクターが、愛される要素のひとつに挙げられる。

「細かくは設定を考えたことがないんですよね。連載当時、忙しくて考える暇がなかっただけかもしれないけど(笑)。何ていうか、〝勝手にキャラが動いてくれた感〟が強かったです。マンガではだいたい6話で一つの物語が完結するようになっているんですけど、『こんなキャラをぶつけちゃえ』ってやれば、なぜかラトで冴羽獠が解決してくれる。毎回、描いていて不思議な感覚がありましたね」

 劇場版2作目のあとには、Netflix で鈴木亮平主演の実写版も控えている。23年は再びやってきた『シティーハンター』の年と言っても過言ではない。

劇場版 シティーハンター天使の涙
©北条司/コアコミックス・「2023 新劇場版シティーハンター」製作委員会

「静かな余生を送りたかったんですけどね(笑)。僕ら世代のマンガ家さんっていうのは、〝マンガ=消耗品〟というふうに叩き込まれていて、『どんどん新しいものを生み出すんだ!』っていう感覚があるんです。当時描いたものが、30年、40年たって未だにこうやって映像化されるっていうのは何でですかね。ありがたい限りです」

劇場版 シティーハンター天使の涙
©北条司/コアコミックス・「2023 新劇場版シティーハンター」製作委員会

 長きにわたり続いているということは、ファンが求めている展開、ストーリーなど、北条氏がファンの気持ちを理解しているからではないだろうか。そんなことを尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「いえ、全然わからないんですよ(笑)。一人ひとり調べていったら、好きなポイントも全然違うと思うし、『結局どの意見に合わせたらいいの?』ってなっちゃう。実は、僕の中では、〝想定する読者〟が長らく決まっていて、それがうちのカミさんなんです。マンガもあまり読まないし、いわゆる〝一般ピープル〟がカミさん。彼女が、『面白い』と言ってくれたら嬉しいし、『つまらない』と言われたら、よし、次はもっと頑張ろうって思っています」

 国民的人気作品には、どうやら〝陰の立役者〟が存在していたようだ。

劇場版 シティーハンター天使の涙
©北条司/コアコミックス・「2023 新劇場版シティーハンター」製作委員会

北条 司(ほうじょう・つかさ)
1959年、福岡県生まれ。85年から連載された『シティーハンター』はアニメ化、世界各国での実写化など、今もなお愛される大ヒット作に。

■作品概要
『劇場版シティハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』

原作:北条 司
総監督:こだま兼嗣
監督:竹内一義
脚本:むとうやすゆき
キャラクターデザイン:高橋久美子、北澤精吾
声の出演:神谷 明、伊倉一恵、田中秀幸、沢城みゆき、堀内賢雄
配給:アニプレックス
2023年9月8日(金)より全国公開

劇場版 シティーハンター天使の涙
©北条司/コアコミックス・「2023 新劇場版シティーハンター」製作委員会