『アオハライド』がドラマ化! 10年以上前の作品でも今なお愛される秘密。不朽の青春マンガで恋・友情・成長を楽しむ

マンガ

更新日:2023/10/4

アオハライド
アオハライド』(咲坂伊緒/集英社)

 2011年から連載され、2014年にはテレビアニメ化、映画化もされた『アオハライド』(咲坂伊緒/集英社)。9月よりWOWOWで、出口夏希とMr.Childrenの桜井和寿の息子の櫻井海音が主演するドラマとして放映されます。そんな少女漫画界の不朽の名作といえる本作を紹介します。

 主人公の吉岡双葉は男子が少し苦手な中学生。でもクラスメイトの中で、田中くんだけは少し違うと感じています。日常の中で徐々に仲良くなっていくふたり。そんな中双葉は、彼と夏休み中に行われるお祭りに行く約束をします。しかし約束の時間になっても彼は現れず。もやもやしたまま始業式を迎えると、なんと田中くんは引っ越してしまっていたのです。会えなくなってから自分の恋心に気づいた双葉。その気持ちを引きずったまま双葉は高校生になりますが、なんと学校で田中くんに似ている人を発見。しかし彼は苗字も、そして性格も激変していて――。

 そんな少女漫画の王道的な展開の本作。中でも一番の魅力はなんといっても田中くん=馬渕洸にあります。癒し系、俺様、優等生……少女漫画のイケメンには多くのパターンがありますが、洸はツンデレ男子。基本的には冷たいし結構キツいことも言うのに、本当は優しくて、双葉が困っている時には絶対に手を差し伸べてくれる。そのギャップに双葉だけでなく読んでいるこちらもハマってしまいます。

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 さらに洸は、とあることがきっかけで心に影を持っている。みんなに心を開いているように見えて、深い部分は誰にも見せないその姿を双葉は「ダミーの扉はパカパカ開くけど、本当に開けてほしい扉にはカギがかかってて……」と評します。しかしその扉も、いつしか双葉にだけ開くように。その「自分だけ特別」感も女子の弱いところ。双葉の様子が普段と違うとき、誰よりも先に気が付いてくれる洸。もちろんその逆もしかりで、“お互いがお互いにとって特別”という描写が、少女漫画の醍醐味であるときめきを生み出します。

 また作中、洸が双葉の好きなところを尋ねられて、「ヒーローみたいなところ」と答える場面があります。その通り双葉は自分でガンガン行動していく女の子。先述の洸が心の扉を開いたのも双葉の行動の結果であるし、恋のライバルが現れた時も、よく知らない相手に直接自分の気持ちを伝えにいくほどの行動力の持ち主です。その行動がいつも良い結果を招くとはかぎりませんが、失敗したら反省し、すぐに前を向けるのも双葉の持ち味。でもそんな双葉のいいところは生まれつき持ち合わせていたものではなく、洸に影響されて育まれていったものなのです。洸は双葉によって過去を乗り越え、双葉も洸によって変わっていく。そんなお互いをいい方向へ高め合えるところも洸×双葉カップルの魅力です。

 タイトルの『アオハライド』とは“青春に一生懸命乗っていく”という意味を込めて作者が考えた言葉。その言葉の通り本作には恋だけではなく友情、それぞれのキャラクターの成長という青春のまぶしさがぎっしりと詰まっています。ぜひドラマと一緒にお楽しみください。

文=原智香