朝起きられない子どもは病気!? 中学生の約10%が発症する起立性調節障害の仕組みと対処法を知り、我が子をサポートする
公開日:2023/9/13
学校があるのに、朝、我が子が起きられないと、親としては学校生活で何か問題が起きているのではないかと不安になるもの。だが、そうした時には心の問題と共に、体に原因があるのではないかという視点を持つことも大切。なぜなら、思春期に発症しやすい「起立性調節障害(OD)」という、体の病気があるからだ。
『起立性調節障害お悩み解消BOOK 「朝起きられない」子に親ができること!』(吉田誠司/翔泳社)は、この病気の症状や治療法などを分かりやすく学べる一冊である。
著者は2014年、起立性調節障害に関する研究で医学博士号を取得。現在は大阪医科薬科大学小児科で心身症外来を担当しつつ、テレビやラジオで起立性調節障害について解説し、病気の周知に取り組んでいる。
本書では起立性調節障害が気持ちの問題ではなく、体の病気であることが詳しく解説されており、当事者の苦しみが分かりやすい。
■そもそも「起立性調節障害」ってどんな病気?
起立性調節障害は、思春期に発症しやすい体の病気のひとつ。著者いわく、原因は自律神経のバランスの乱れだという。自律神経は幼少期には交感神経(覚醒モード)が優位だが、成人期には副交感神経(リラックスモード)が優位になる。思春期は、その過渡期にあたり、自我同一性を確立する時期でもあるため、自律神経のバランスが崩れやすくなるそう。
主な症状は、頭痛や立ちくらみ、めまい、倦怠感など。午前中に症状が強く現れることから、学校への遅刻や欠席に繋がりやすい。著者によれば、中学生の約10%が、この病気で悩んでいるそうだ。
午後になって症状が落ち着くと元気になったり、テンションがあがる楽しいことがある日には朝から元気に過ごせることもあったりするため、起立性調節障害の子は「怠けているだけ」と誤解されやすい。
だが、周囲がそうした態度であると、起立性調節障害の子は孤立し、頑張れない自分を責めてしまう。だからこそ、親や周囲の大人は「朝起きられない」という子どもの悩みをじっくり聞き、様々な角度から原因を探っていく必要がある。
著者いわく、起立性調節障害は適切な治療が行われた場合、軽症であると数ヶ月以内に症状が改善するそう。だが、週に1~2回、遅刻や欠席が見られる「中等症」では1年後の回復率は50%、2~3年後は70~80%であるのだとか。
なお、不登校を患う「重症」では、1年後の復学率は30%。社会復帰には少なくとも2~3年はかかると考えたほうがいいとのこと。
この病気は心理的・社会的なストレスで悪化するため、早めに病院を受診することが重要だ。本書には病院選びのポイントも詳しく記されているので、ぜひ参考にしてほしい。
■家庭で気をつけたい「食事・運動・睡眠」のポイントは?
起立性調節障害を改善するには、家族のサポートも必要不可欠。例えば、日々の食事でも気をつけたいポイントがある。
著者いわく、起立性調節障害の子に推奨されている水分量は1日1.5~2L、塩分は1日8~10gであるそう。こうした食事は、症状の強い午前中に摂ると効果的なのだとか。
また、就寝・起床時間をできるだけ一定にし、体内リズムを整えやすくすることも重要。そのためには、休日の起床時間が平日より2時間以上遅くならないよう、注意したい。
なお、活動量の減少に伴って低下した心肺機能や筋力・血行の改善も、起立性調節障害の症状をよくすることに繋がるという。そこで取り組みたいのが、有酸素運動。まずは、座りながらできる「カーフレイズ」や寝たままできるエアロバイク、柔軟体操、ストレッチで筋肉をほぐし、血行をよくするのがおすすめだ。
・座ってできるカーフレイズのやり方
①椅子に座り、両足を少し前に出す。
②その状態でかかとを限界まで上げて、ゆっくり下ろす。
③この動作を20回1セットなど、回数を決めて行う。
著者は他にも、起立性調節障害の子にとってよい起こし方や規則正しい生活を送るためのタイムスケジュールの決め方など、親が意識したいサポート法を具体的に紹介。起立性調節障害を学校側に理解してもらうコツも分かりやすく解説されているので、そちらもチェックしてほしい。
夏休みのような長期休暇中、ゲームやネットなどに熱中して夜更かしをする日が増えると、自律神経の日中リズムの乱れに繋がりやすくなる。休み明けには我が子の様子をよく観察し、もしもの時にいち早く対処できるよう、本書を手元に置いてほしい。
文=古川諭香