「占いなんて嘘っぱちです」占いの秘密の裏側をとことんまで明かしてしまう『占い師星子』に、占いの意義を考えさせられる
更新日:2023/9/27
星占い、姓名判断、四柱推命。世の中には、ありとあらゆる占いがあふれ、占いをテーマにしたテレビ番組もレギュラーで放送されている。人はなんだかんだ、占いが好きなのである。
そんな大ブームが続く占いの、裏側、全部見せますという触れ込みの『占い師星子』(岬ミミコ/小学館)がSNSで話題だ。8月に1巻が発売になったばかりだが、私も占いが好きなので思わず手に取ってしまった。
主人公、天野星子は、占いが大好きな大学生。就職活動で苦戦の末、尊敬するカリスマ占い師の神ノ山のもとで働き始める。しかし、神ノ山の素顔は外面とは大違い。ショックを受ける星子だが……
占いで使われる心理テクニックとは?
占いに心酔する星子に、神ノ山は自分の出版する予定の本の星子の星座・かに座の部分のゲラを読み上げる。当たっていると感動するが、それは誰にでも当てはまる内容、「バーナム効果」を利用したものに過ぎないと断じられる。ショックを受ける星子に対し、神ノ山は「今読んでいたのはいて座のところだった」とさらに追い打ちをかけ、
「占いなんて嘘っぱちです」
と、営業用の笑顔で伝える。このセリフは帯にもなっているのだが、インパクト抜群である。
さらに、占いのネタバラシは続く。大抵占いのブースは狭く、光量を絞られ、おごそかな声で占い師が語る。これもひとつの雰囲気作り、信用させるためのテクニックだそうだ。
他にも相手の見た目からさまざまな情報を読み取るコールドリーディング、会話でいかにして心理的距離感を縮めるかなど、占い師が駆使する心理テクニックをつまびらかにしながら、神ノ山は星子の心酔を打ち砕いていく。
占いの存在意義とは何か
落ち込む星子は手相をみる占い師・有栖川ローレライに遭遇。友人を占ってもらうことにした。その後ローレライに手相を教えてもらううちに、自分の胸のわだかまりを吐露する。そんな星子に、
「占いはね、その人の生き方のヒントを見つけるきっかけ作り。」
「占いに来てくれた相談者のカウンセリングの時間でもあるのよ。」
と伝えるローレライ。立ち直った星子は、もう一度、神ノ山に向き合うことを決意する。
占いで使われるテクニックだけではなく、占い自体の解説も盛りだくさん。悪徳な占い師に騙されないように気をつけなければと思いつつ、手相の線の見方を解説する場面では、読みながら、つい自分の手をチェックしてしまっていた……。
星子の成長も楽しみ
占いを信じるタイプには「ウッ」となるシーンも多いが、星子のくるくると変わっていく豊かな表情が面白い。公式ページにこの漫画は星子の成長物語としても楽しめると編集部からのコメントがあったが、なるほどその通り。
タイトル通り、星子は占い師になるのか? これからの星子の成長から目が離せない。個人的には、理解のありすぎる星子の彼氏も気になるが……。
占い好きも、そうでない人も楽しめる
実は私は、たまにタロットカードで自分を占う。どれだけシャッフルしても出てこないカード、反対に何度も出るカードが確かに存在する。たかだか数回でこんなに偶然が起こるのだから、占いに出るようなドラマチックな偶然だってあり得るのでは、と個人的には思っている。
次巻では、さらにキャラクターの濃い占い師や、さまざまな占いが登場するそうだ。占い好きな人、占いに懐疑的な人、どちらにもおすすめのマンガである。
文=宇野なおみ