ジュール・ヴェルヌ『地底旅行』あらすじ紹介。暗号に導かれて辿り着いたのは…!? 地底の大洞窟から無事生還できるのか?

文芸・カルチャー

公開日:2023/9/21

 空想科学小説の父と呼ばれるジュール・ヴェルヌの代表作の1つ『地底旅行』。海洋冒険小説の傑作と言われています。本稿では『地底旅行』について、結末までのネタバレを含めたあらすじをご紹介します。長編ですが一気に読めてしまう小説なので、ぜひ手に取っていただいて読んでみてください。

地底旅行

『地底旅行』の作品解説

 本作の特徴である地質学・古生物学を織り交ぜた教養的な描写は、ヴェルヌならではといえるでしょう。

 また、本作は主人公であるリーデンブロック教授の同行者で、甥でもあるアクセルの視点で書かれており、「わたし」という一人称視点が用いられています。ヴェルヌ得意の科学を啓蒙する描写が多いのと同時に、アクセルの成長物語として描かれていることも特徴的です。

『地底旅行』の主な登場人物

リーデンブロック:狂人じみたポジティブさで地底を冒険する鉱物学の教授。

アクセル:本作の語り手。リーデンブロックの甥。しぶしぶ同行するも冒険には反対していた。

ハンス:案内人を引き受けた巨漢の猟師。頭の良い鴨撃ちの達人。

『地底旅行』のあらすじ​​

 ドイツのハンブルグに住む著名な鉱物学教授リーデンブロックは、帰宅するなり興奮した声で甥のアクセルを呼びつけた。げんなりしているアクセルに、リーデンブロックは知人の骨董店で購入した手書きの古書のすばらしさを説く。すると、その本の間からふたりの足元に1枚のメモが滑り落ちた。その羊皮紙のメモには暗号が記されており、使用されている文字は購入した古書と同じルーン文字。興奮の度合いを増したリーデンブロックは、食事そっちのけで気乗りのしないアクセルと共に解読を試みる。

 解読作業は困難を極めた。不眠不休で暗号と格闘するリーデンブロックであったが、アクセルの偶然の気づきから解読に成功。そこに書かれていたのは「アイスランドにあるスネッフェルス山の噴火口を下りれば、地球の中心にたどり着ける」という驚くべき内容であった。想像以上の内容に感激したリーデンブロックは、すぐさま旅支度に取り掛かり、渋るアクセルを引きずってアイスランドへと発った。

 ハンスという現地で雇った優秀な案内人を加えた3人は、スネッフェルス山の噴火口を下っていく。途中、水の欠乏により生死の境をさまよう、アクセルがはぐれ行方不明となるといったアクシデントに見舞われながらも、ついに3人は数十日をかけて136キロを下り地底の大洞窟へと到達する。

 地底の大洞窟には超自然的な世界が広がっていた。電気性の光に照らされた原始の海や、巨大キノコをはじめとした太古の植物が茂る古代樹の森、地上では絶滅したはずである太古の生物が生存している痕跡。感激するリーデンブロックとアクセルであったが、ここで1つの問題に直面する。海に阻まれそれ以上進めないのだ。

 木の化石を集め、ハンスが作った筏で海に乗り出す3人。道中、魚竜と長頸竜の戦いに遭遇し、さらに数日間にわたる大暴風雨に巻き込まれながらも、3人はなんとか対岸に漂着する。そして、周囲の探索により生きた古代生物や人間の頭蓋骨、さらに身長3メートルを超える巨人の死骸を発見し、地底人の存在に恐れおののく。

 ハンスが修復した筏に乗ってさらなる探索を続ける3人であったが、崩落した岩によってトンネルが塞がれており、立ち往生してしまう。そこで、道を開くために岩を爆破するも、衝撃で生まれた激流にのまれてしまう3人。気が付くと3人は筏ごと溶岩に乗って上昇しており、リーデンブロックは、この噴火に乗ることが地上に戻る最後のチャンスだと言う。

 噴火に押し上げられ脱出した場所は、地中海のストロンボリ島だった。無事、地上へと生還できたことを喜ぶ3人。ハンブルグに戻った3人は偉人として歓待を受け、後に出版された『地底旅行』は世界中で大評判になるのであった。

<第91回に続く>