コナン・ドイル『緋色の研究』あらすじ。名探偵シャーロック・ホームズ初登場作をネタバレ有りで紹介!

文芸・カルチャー

公開日:2023/9/22

 名探偵シャーロック・ホームズを知らない人はいないでしょう。しかし、実際に作品を読んだことがある方は意外と少ないのではないでしょうか? 本稿ではシャーロック・ホームズが初めて登場した『緋色の研究』のあらすじを簡潔にご紹介いたします。完全なネタバレを含みますのでご注意を。

<第92回に続く>
緋色の研究

『緋色の研究』の作品解説

『緋色の研究』は、アーサー・コナン・ドイルによる、シャーロック・ホームズシリーズ最初の作品です。ホームズとワトスンの出会いから始まり、コンビで挑む最初の事件を描いています。本作は2部構成を採っているのが特徴で、ワトスンが語り手となり事件の捜査を描いた第1部と、犯行に至った過去が描かれる第2部で構成されています。

 ちなみにホームズシリーズのほとんどの作品はワトスンによる事件記録という形で書かれており、本作もこのスタイルで書かれています。

『緋色の研究』の主な登場人物

シャーロック・ホームズ:主人公の名探偵。卓越した観察眼と分析力を持つ。

ジョン・ワトスン:物語の語り手。ホームズの相棒で医師。

グレグスン:スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)の刑事。ホームズに事件の相談を持ちかける。

レストレイド:スコットランド・ヤードの刑事。グレグスンとはライバル関係。

ドレバー:被害者。空き家で外傷のない死体として発見される。

スタンガスン:被害者。刺殺体で発見される。

ジェファスン・ホープ:辻馬車の馭者(馬車の運転手)。

ルーシー:若き日のジェファスンと結婚を誓い合った美女。

ジョン:ルーシーの父親。

『緋色の研究』のあらすじ​​

 軍を退き、経済的な理由から同居人を探していたジョン・ワトスンは、知人から同じく同居人を探しているという「科学的で特異な男」シャーロック・ホームズを紹介される。初対面にもかかわらず、人並外れた観察力と分析力をもって、握手ひとつでワトスンの過去を看破するホームズ。大いに感心したワトスンは、ベーカー街221Bにあるアパートでホームズとの共同生活を始める。

 共同生活を始めて間もない頃、ホームズのもとにグレグスン刑事から、殺人事件が発生した旨の手紙が届く。ある空き家でドレバーという男性の死体が発見されたが、グレグスン刑事と、グレグスンの同僚でライバルでもあるレストレイド刑事は完全にお手上げだというのだ。

 ワトスンを連れて現場を訪れたホームズ。現場には血痕と血のりが残されていたが、遺体に外傷はない。壁にはその血で書かれた「RACHE(ドイツ語で“復讐”の意味)」の文字。そして、遺体搬送の際に発見された女性の結婚指輪。ホームズは卓越した観察眼と知識を駆使して現場検証を行い、被害者は毒殺されたことを解き明かす。そして、結婚指輪こそ犯人に近づく鍵であると見たホームズは、新聞に指輪の拾得記事を掲載する。だが、現れたのは足元もおぼつかない老婆で、しかも、その老婆を尾行したが見事にまかれてしまう。

 さらに、レストレイドにより、ドレバーの秘書であるスタンガスンの刺殺死体が発見されたとの知らせが。いよいよ事件は混迷を極めていくかに見えたが、ホームズは意に介さず、ある1台の辻馬車を呼ぶ。そして、何事かといぶかしげに見る一行を尻目に馭者(馬車の運転手)に手錠をかけ高らかに宣言する。

「諸君、彼が事件の真犯人であるジェファスン・ホープ氏です!」

 動機は過去にさかのぼる。砂漠で命を救われたことがきっかけでモルモン教に改宗し、モルモン教徒の町で暮らしていた美女・ルーシーは、若き日のジェファスン・ホープと出会い、恋に落ちる。ルーシーの父親であるジョンもふたりの仲を認めたが、無情にもモルモン教の指導者はルーシーに、ドレバーかスタンガスンどちらかとの結婚を命じる。指導者に背けば命がない。町からの脱走を図るジョン、ルーシー、ジェファスンの3人。しかし、ドレバーとスタンガスン率いる追跡隊によりジョンは殺され、ルーシーは奪い去られてしまう。

 その後、ドレバーと強制的に結婚をさせられたルーシーは、心労がたたり病死。葬儀に忍び込んだジェファスンは、ルーシーの指から結婚指輪を抜き取ると、復讐を誓いその場を去る。

 月日は流れ、追跡の果てに辿り着いたロンドンでジェファスンは復讐のチャンスをつかむ。ジェファスンが馭者に扮していた辻馬車にドレバーが乗り込んだのだ。

 ジェファスンはドレバーを空き家に連れ込むと、毒の丸薬と、外見では判別できないただの丸薬のどちらかを選ばせ、ふたり同時に飲み込むという「毒薬の決闘」を挑む。結果、ジェファスンが勝利しドレバーは毒により死亡。狂喜したジェファスンは、興奮のあまり鼻血を出す。殺人現場に残されていた血文字はこの血で書かれたもので、結婚指輪はこのとき落としたのである。

 次の標的はスタンガスン。居場所を突き止めたジェファスンは、ドレバーと同様に決闘を挑む。しかし、スタンガスンは聞き入れず襲いかかってきたため、ジェファスンはやむなくナイフで刺殺した。

 逮捕されたジェファスンは、事件の顛末をすべて語ったその夜に、患っていた大動脈瘤が破裂して命を落とした。

 こうして殺人事件を見事に解き明かしたホームズ。しかし、新聞ではグレグスンとレストレイドが事件を解決したと報じていた。手柄を横取りされても平然としているホームズを見て、ワトスンは彼の活躍を記録し、世に出すことを決める。