小説『オペラ座の怪人』あらすじ紹介。ミステリー要素強めの原作。オペラ座の怪人ファントムの最期は?
公開日:2023/9/16
日本では劇団四季のミュージカルで有名な『オペラ座の怪人』ですが、悲恋の要素が強いミュージカル版と比べ、原作ではミステリー小説寄りであることをご存じでしたか? 本稿ではガストン・ルルー『オペラ座の怪人』のあらすじをわかりやすく解説します。映画やミュージカルとどのような違いがあるのか、ぜひお手にとって確かめてみてください。
『オペラ座の怪人』の作品解説
本作は現在でこそミュージカルの定番中の定番ですが、元を辿れば1909年にフランスの新聞『ル・ゴロワ』に寄稿された新聞小説でした。作者は事件記者の経験があり、本作の語り部も記者という設定になっています。ゴシックホラーとしての筋書きと、その劇的な結末は多くの読者に愛され、後世でも映画化や舞台化の機会に恵まれました。
『オペラ座の怪人』の主な登場人物
クリスティーヌ・ダーエ:パリ国立オペラの若手ソプラノ歌手で、本作のヒロイン。
ラウル・シャニュイ子爵:クリスティーヌの幼馴染にして恋人。エリックにとっては恋敵。
エリック:オペラ座の地下に棲む“亡霊(ファントム)”と名乗る怪人。クリスティーヌにはエリックと名乗り、類稀な音楽の才能と、奇術や投げ縄などの技術に恵まれている。
カルロッタ:オペラ『ファウスト』で主演を務める高慢なソプラノ歌手。
ダロガ:物語後半で登場する謎多きペルシャ人。ファントムの過去を知る男性。
『オペラ座の怪人』のあらすじ
オペラ座の公演を休演したカルロッタの代役を務めたクリスティーヌは、初舞台で大成功を収める。舞台を見た恋人のラウルが彼女のもとを訪れるが、彼女は楽屋へ閉じこもり、姿なき謎の声と恋人のように会話していた。
その後、“ファントム”を名乗る怪人が新支配人に要求を送りつける。幾度目かの手紙には、クリスティーヌを舞台に上げるよう指示があった。聞き入れずカルロッタがプリマドンナとなった上演中、巨大なシャンデリアが落下し、1人の死者と大勢の怪我人を出す事態となった。
皆が怪人の所業に怯える中、クリスティーヌはラウルに「音楽の天使」の秘密を打ち明ける。夜ごと、楽屋の鏡から彼女に語りかけるその声こそ、ファントムであった。彼女は地下にさらわれ、「エリック」と名乗る怪人とともに過ごすが、仮面の下の醜い素顔を見てしまい、金の指輪を着けることと「彼を裏切らない」ことを条件に解放された。
ラウルは彼女を逃がし、かくまう算段を立てるが、翌日の舞台上でまたもクリスティーヌは姿を消してしまう。そこへ元刑事(ダロガ)を名乗るペルシャ人記者が現れ、共に捜索へ向かうこととなった。地下を進むラウルとダロガだったが、地下にあるエリックの拷問部屋に閉じ込められてしまう。
その時、「結婚ミサ曲を選ぶか、鎮魂ミサ曲を選ぶかふたつにひとつだ!」というエリックの声がした。エリックはクリスティーヌに恋をしていて、彼女が結婚し式を挙げなければ、みんなを殺し、自分も死ぬ覚悟を決めているという内容の会話が聞こえてきた。
その後、ラウルとダロガに気づいたエリックは、クリスティーヌの目の前でふたりを溺死させようとするが、すんでのところで彼女はエリックの求婚に応じ、生きて妻となることを誓った。そして、ラウルは人質として地下に残され、エリックの旧知の恩人であったダロガは地上へ送られる。
しかし、クリスティーヌのキスで生まれて初めて真実の愛を知ったエリックは、クリスティーヌが愛するラウルと一緒になれるように、最後の望みを伝えてふたりを解放する。その望みとは、エリックが死んだらこっそり埋葬すること、金の指輪も一緒に埋めるがそれまではクリスティーヌがはめていることというものだった。
記者であったダロガはエリックの死亡を誌面で伝え、後に隠れ家を訪れたクリスティーヌは約束通り、金の指輪とともにエリックを埋葬するのだった。
<第86回に続く>