猫が顔を洗うと雨が降る? 日本に古くから伝わる天気に関することわざを、山岳気象予報士が科学的に解説!

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公開日:2023/9/16

天気のことわざは本当に当たるのか考えてみた
天気のことわざは本当に当たるのか考えてみた』(猪熊隆之/ベレ出版)

 猫が顔を洗うと、ツバメが低く飛ぶと、飛行機雲が長く残ると……

 これらはすべて、「雨」を予報することわざ。「夕焼けは晴れ」のような空に関するものや、「渡り鳥が早く来ると雪が多い」といった地域色の強いものなど、日本には数多くの天気に関することわざが存在する。聞いたことはあっても、それらが本当なのか考えたことはあるだろうか。

 そんな疑問に山岳気象予報士の猪熊隆之氏が真っ向から答えてくれるのが『天気のことわざは本当に当たるのか考えてみた』(猪熊隆之/ベレ出版)。天気の話題になったときに知っていると自慢できる、お天気ことわざの豆知識を紹介しよう。

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猫が顔を洗うと、雨?

 誰もが一度は聞いたことがあるお天気ことわざ「猫が顔を洗うと雨」。正直、このことわざの信ぴょう性はかなり低いという。

 猫のヒゲには神経が集中していて、空気のわずかな動きや音の振動を感じ取ることができる。猫は環境の変化に対して不安を感じやすいので、その不安を取り除くために顔を洗うのだと言い伝えられている。また、湿度が上がると猫につきやすいノミの活動が活発になるため、かゆくなって顔をこするとも。

 しかし、よく考えてみれば、猫が顔を洗う理由はこれだけではない。猫が顔をなでたり、毛づくろいしたりする「グルーミング」は、汚れがついたとき、食後のニオイを消したいとき、体温調節するときにも行う。さらに病気から身を守る、ストレスを紛らわせる効果もあるそうだ。猫に顔を洗う理由を聞ければ詳しく検証できるかもしれないが、現在は難しい。よってこのことわざは、当たるときもあるけれど、外れる可能性も同じくらい高いという。

ツバメが低く飛ぶと、雨?

 お天気ことわざの中ではメジャーな「ツバメが低く飛ぶと雨」。猪熊氏の実感としては、このことわざは「意外と当たることが多い」そう。

 よく言われるのが、雨の前に空気が湿っていると、ツバメの餌となる虫の羽が水分を含んで重くなり、高く飛べなくなるという説。その虫を追うツバメも低いところを飛ぶのだと言われている。しかし、日本の夏は晴れていても湿度が高い。虫の羽の水分が理由なら、夏場の虫は常に低く飛んでいても良さそうなものだが、実際そうでもない。

 そこで紹介したいもう一つの説は、虫には気圧や湿度の変化を感じる力が備わっているのではないか、というもの。その力を使って雨を察知し、すぐに葉っぱの裏などに隠れられるよう地面の近くを飛ぶのではないだろうか。その虫を探すからツバメも低いところを飛んでいるというわけだ。虫に関する研究がもっと進めば、このことわざをより科学的に検証できるようになるかもしれない。

飛行機雲が長く残ると、雨?

 飛行機が飛んでいった後に見える、白い筋のような飛行機雲。この飛行機雲がいつまでも長く残って見えると、次第に天気が崩れていくということわざを知っているだろうか。

 飛行機雲は、機体から出る排ガスによってできる。排ガスとともに出た水蒸気が外気で急激に冷やされると氷の粒になり、雲となるのだ。この雲ができる温度は、マイナス30℃。日本付近では、冬は高度5000m以上、夏は9000m以上の高さでないとマイナス30℃にはならない。雲ができる高度の空気が乾燥していれば、すぐに蒸発して消えてしまう。湿っていると、蒸発せずに長く残って見えるのだ。

 この湿った空気が低気圧や台風の接近によるものであれば、天気は次第に崩れていく。しかし、別の原因がある場合もあり、そのときには崩れない。確率で言えば、雨がふるのは50~60%くらいだそうだ。

 本書では古今東西さまざまな天気にまつわることわざについて解説している。迷信にすぎないものもあれば、天気予報がなかった時代の人間の知恵で現在でも通用するものもある。中には30年ほど前までは当たっていたが、温暖化の影響で変わってしまったというものも。読み終えたらきっとことわざから天気予報をしてみたくなるはずだ。

文=冴島友貴