美術の世界に必要不可欠なアイテムは「見る力」と「描く力」。この2つの特徴を解説!/美術の進路相談②

文芸・カルチャー

公開日:2023/9/24

美術の進路相談』(イトウハジメ/ポプラ社)第2回【全5回】

「絵を描くことを仕事にしたい」と思っている、美術大学や専門学校への進学を考えている人は必見! 大学の教壇に立ち美術を教えているイトウハジメ氏が執筆した『美術の進路相談』は、画家や漫画家、イラストレーターなど、絵を描く職業についての解説はもちろん、絵を描き続けるために大切なポイントをマンガやイラスト、文章でわかりやすく紹介します。昔は絵を描いていたけどが今は描かなくなった人や、絵を描かないけど鑑賞することは好きな人など、美術を趣味にしている人にもおすすめです!

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美術の進路相談
『美術の進路相談』(イトウハジメ/ポプラ社)

美術の世界を歩いてみよう

美術の進路相談

 美術の世界とは、どんな世界でしょうか。

 人たちのもとを訪ねてみたいと思います。

 美術性や生活の実態はあまり知られていません。

 一体路に取り組み、どんな生活を送っているのでしょう。そんな知られざる人々の姿をのぞいてみたいと思います。ここからぼくと一緒に、美術の世界を歩いてみましょう。

 その前に忘れちゃいけないのは、「見る力」と「描く力」という、2つのアイテムを装着することです。簡単に、アイテムの特徴についてご説明しましょう。

 「見る力」とは、主に目を使って、モノや人、事象に向き合う力です。単に「目に情報が入ってくること」とは異なるので、混同しないよう注意が必要です。あらゆる情報と出来事のなかから、心打たれるもの、美しいもの、醜いもの、大切なものなどに反応し抜き出す力ともいえます。そのために、目を使うだけでなく、手足を使い、時間をかけ、心を砕くことで磨くことができます。

 「描く力」とは、主に手や指先を使って、平面に色や形を生み出す力です。手で直接描くこともできますが、多くは鉛筆や筆、ナイフやローラーなど、あらゆる道具を駆使します。この道具が自分の最も近くに寄り添う相棒ですから、自分の気質にぴたりとくるものを探すことが大切です。

 それでは「見る力」を右手にもち、「描く力」を左手に握ってください。「準備がまだだ」と慌てなくてもだいじょうぶ。実はみんな子どもの頃から、この2つのアイテムが両ポケットに入っています。入れっぱなしで錆びてしまったなという人も気落ちなさらず。少し磨けば、じわっと光沢をもちはじめます。あとは空腹時のおやつがあれば、見知らぬ世界も歩けるはずです。

 この美術の世界の人々についてぼくなりにご紹介をするなら、「魅せる力をもつ人」でしょう。

 「魅せる」とは、人の心を引きつけたり、動かしたりすることです。つまり人間の心を震わせ、心に寄り添う行為であり、美術が最も力を発揮した時に生じる引力です。

 「絵を描き、人を魅せる」……。美術の中心地に住む人々は、多かれ少なかれこの力を秘め、育ててきた人たちだといえます。

美術の進路相談

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