アニメーターが『もののけ姫』を見ると? "マンガ家妻”から見た、夫の不思議な日常と壮絶な舞台裏!

マンガ

更新日:2023/10/3

わが夫はアニメーターである
わが夫はアニメーターである』(見原由真/KADOKAWA)

 いまや世界に誇るジャパンカルチャーのひとつとなった「アニメ」。その制作を支えるのが作画を担当する「アニメーター」の人々だ。ときにはその労働環境の過酷さが話題になるほど、彼らの毎日は忙しい。……と言いつつも、実際にどんなことをしているのかイメージしにくいのも事実。まさに彼らは、華やかなアニメの裏方であり、黒子。なかなか表に出てきてくれる存在ではないのだ。

 そんなアニメーターを夫に持ち、妻の視点からその生態を描いたのが『わが夫はアニメーターである』(見原由真/KADOKAWA)だ。『キルラキル』や『プロメア』など数々のヒット作を生み出してきたTRIGGERのアニメーションプロデューサー舛本和也氏お墨付きでもある本作。読むと、ぼんやりとした存在だったかもしれない「アニメーター」の仕事ぶりを知ることができるだろう。

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 そもそも著者の見原さんは、よくこう言われてきたそうだ。

「夫婦で似た職業だからわかり合えて良いね」

 たしかにマンガ家とアニメーターは「絵を描く職業」という点において、似ている気がする。ところが、これがまったく異なる。見原さん曰く、アニメーターは「役者」であり、マンガ家は「監督や脚本家」としての役割を担っているそうだ。

わが夫はアニメーターである

 だからこそ、一番近いところにいるはずの見原さんにとっても、アニメーターである夫がとても不思議な存在だった。その未知なる部分を知るため、見原さんは夫・タッペイさんをマンガにすることを決意したという。

 そうして明らかになっていくアニメーターの生態は予想以上に面白いことばかりだ。

 たとえば、タッペイさんの実家に集まり、みんなでジブリアニメ『もののけ姫』を観ていたときのこと。各々が感想を言い合うなか、タッペイさんの口から出てきたのは、アニメーターにしか理解できないようなものだった。

わが夫はアニメーターである

わが夫はアニメーターである

 24コマのフルアニメーション……? アニメの知識がない人からすれば、それが凄いことなのか逆なのか、一体なにを言っているのか戸惑うだろう。結果、見原さんが副音声としてタッペイさんの発言の補足をする始末だ。

わが夫はアニメーターである

 また、アニメーターは「絵のプロ」なので、どんなポーズであってもささっと描く技術を持っているのだろうと思いがちだ。しかし、彼らはプロだからこそ、とにかく資料をチェックする。そしてときには、妻である見原さんが資料代わりになることさえある。

わが夫はアニメーターである

 それもこれも、視聴者に疑問を抱かせないリアルな絵を描くため。目線や顔の位置、指先に至る細部にまで、彼らは命を込めているのだ。

わが夫はアニメーターである

わが夫はアニメーターである

 本作には他にも、タッペイさんの日常を通して、知られざるアニメーターの生態が詳らかにされていく。が、そこで終わらない。終盤で描かれるのは、見原さんとタッペイさんの結婚秘話である。とある病気になってしまった見原さんが、いかにタッペイさんに救われたのか。そのエピソードに触れたとき、本作は「マンガ家とアニメーター夫婦の物語」から、「見原さんとタッペイさんの唯一無二のストーリー」へと変化する。

わが夫はアニメーターである

 マンガ家である妻の目から見た、アニメーターである夫の日常。そこには汗と涙と、アニメにかける情熱がたくさん詰まっている。本作に触れると、何気なく観ていたアニメが数倍熱いものとして感じられるかもしれない。

文=イガラシダイ

わが夫はアニメーターである

アニメイト特典:イラストカード
※特典は無くなり次第、終了とさせて頂きます。ご了承下さい。

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