ファッションに疎い一般読者も必読!フルカラーのイラストで詳しく紹介されるさまざまなジャンルの現代ファッション
更新日:2023/10/30
私はファッションに疎い。幼少期からあまり服を買ってもらった記憶がなく、その影響かどうかはわからないのだが、トップスやボトムスの選び方や、色の合わせ方が未だによくわからないのだ。高校生のころ、「理央ちゃんに似合いそう」と友人が白ロリと呼ばれるロリータファッションを着せてくれて、いっしょに写真を撮ったのだが、そのときも「人に選んでもらうのはラクだなあ」と思っただけだった。
そんな私でも、現代ファッションのジャンルが時と共にどんどん幅広くなっていることは知っている。人間は性格、性別、年齢、趣味、仕事など、さまざまな要素によって成り立ち、それによって好むファッションのジャンルも変わるのだろう。一方で、そういった他者から見た個性とファッションのタイプが一致していない人もいる。また、私のように着るものに無頓着な人もいて、外出するときはトップスとボトムス、靴、バッグなどが合っているか、よく家族にチェックしてもらう。
『イラストレーターのための現代ファッション大図鑑』(ともわか:イラスト、よしかわかなめ:監修/KADOKAWA)の対象読者はイラストレーターである。しかし私は漫画が好きなので、載せてあるフルカラーのイラストに惹かれて手に取った。数ページ読んで、これはファッション誌としての意義もあるのではないかと感じた。
本書は大きな8つの章(カジュアル系、かわいい・きれい系、ギャル系など)に分かれ、そのカテゴリの中でファッションのジャンルが細分化されている。たとえばカジュアル系の章には、「アメカジ」「ファストファッション」「メンズライク」などが掲載されているので、その中で自分のキャラに着せたいタイプのファッションを見つけたら、そのページに進んでほしい。コーディネート例からどうアレンジすれば良いか、ファッションが苦手な人でもわかりやすい構成で掲載されている。
ファッションのジャンルひとつひとつに、わかりやすく細かな解説がある。そのファッションをよく着ている年齢層(20代、30代、40代など)やそのファッションが似合う人物の個性(キャラクター)、より深く知りたい人が参考にできるブランド名もあり、トップスやボトムスも複数掲載、そのジャンルのファッションに合うアウターや靴、アクセサリーなどの小物まで載っている。色の合わせ方や柄・模様までフルカラーで載っているので、気になるものを見つけたら付箋を貼り付けておくと便利だ。コーディネート例は各ジャンルの最後のページに載っているので、前のページを振り返りながらコーディネートをもとにアレンジすることができる。どのジャンルを選ぶかは、キャラクターの個性に合わせても良いし、反対にキャラクターの個性と異なるファッションにすればギャップを生み出すこともできるだろう。
ナチュラルやフェミニンは、昔からある王道のファッションジャンルだ。私が驚いたのは、「個性派系」の章で地雷系や量産型ファッションが載っていることだった。地雷系とは「束縛の激しいメンヘラ気質の女の子」のことを指すが、「人からどう見られるかより自分がどう着こなしたいかを重要視」するという特徴まで解説されている。
正直、ファッション誌のモデルは長身で小顔であることが多く「真似しようと思ってもできないな」と感じていた。しかしイラストは写真ではないので、モデルのようなスタイルの良さを連想させる人物は少なく、創作者はもちろんファッションに興味のない私のような人たちも参考にしやすいのではないだろうか。少なくとも私は本書によって、「自分だったらどれがいいかな」と考える機会を得られた。
章と章のあいだにあるコラムも必読だ。私のように「流行のファッションと言われてもピンとこない」と感じている人であれば、“ファッションに疎い人がトレンドを知るにはどうしたらいい?”というタイトルのコラムをおすすめしたい。「今」に合わせたファッションを知りたいなら、初心者はファッションショーよりも渋谷に行けば良いと具体的に指南されている。渋谷では年に2回「SHIBUYA FASHION WEEK」も開催され、渋谷が遠い人も、今の時代であればSNSで渋谷を歩く人のファッションを見ることができる。私の出身地である関西なら、心斎橋や神戸にファッション感度の高い人が集まっているイメージがある。
私は小説も書くので、キャラのイメージに合うファッションの参考になったし、自分自身が服を選ぶときにも役立ちそうだ。ファッション誌になかなか興味が持てない人も読みごたえのある書籍なのではないだろうか。
文=若林理央