チートな能力の秘密と運命が明らかになり、物語は新たな展開に! 累計50万部突破の人気異世界転生譚『不運からの最強男』

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PR 更新日:2023/11/7

不運からの最強男
不運からの最強男』(中林ずん:作画、フクフク:原作/スターツ出版)

「今日の運勢最悪…」「運が向いてきた!」「あいつは運がよかっただけ」どうして人はこうも「運」というものに振り回されるのだろう。そもそも「運」という存在は不思議なものだ。皆から渇望されるが、望まない結果になればその原因を押し付けられる。ただひとつ言えるのは、幸せになるためには「運」も必要だということだ。

不運からの最強男』(中林ずん:作画、フクフク:原作/スターツ出版)は、そんな「運」がテーマの作品だ。小説投稿サイトに発表された原作小説をもとに、小説とコミック版が同時に出版され、主人公の成長、迫力あるバトルシーンで読者を魅了している。謎や伏線が張られて飽きさせないストーリー、美麗な作画で描かれる魅力的なキャラクターたちの絆やドラマでも話題となり、シリーズ累計50万部を突破。そのコミック版4巻が2023年9月22日に発売された。

 物語は不運だった男が事故によって死亡し、前世の記憶を持ったまま異世界で赤ん坊に転生するところから始まる。この世界の名門・アーベル家に生まれた彼は、ジークベルトと名付けられた。彼は今世では優しく温かい家族のもとで「平穏な日々が過ごせる……」と思っていた。ただジークベルトには、ある種「幸運」、ある種「不運」な体質が備わっており、その体質が故に大切なものや家族を守るため最強への道を歩き出すことになる。

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不運からの最強男

少年は転生して得たチート能力のもたらす運命を知り、決意する

 ジークベルトの能力はチート級だ。普通ではありえない魔法の上級魔属性をコンプリートしており、さらに“幸運者”という神から愛される存在だった。この“幸運者”とは乗り越えれば願いが叶うチャンス(=危機)を引き寄せる代わりに、乗り越えられなければ災厄にしかなりえない、前世での不運を兼ね備えたような体質。このままでは自分だけでなく家族にも危害が及ぶ…そう考えたジークベルトは、この事実を一人で背負い、人一倍強くなることを決意する。

不運からの最強男

 そう決意した一番の要因は、不治の病で母を失ったことであろう。ジークベルトは母を亡くしたことで自身の体質を知り、激しく後悔した。もうとりかえしはつかない、だからこそ二度と同じ後悔を繰り返さないと強い意志を持って、家族を守るために強くなると決めたのだ。

 人は、どれだけ強い運を持っていても、その運を生かすために行動しなければ幸せになることはできないのだと思い知らされる。桁違いの運気を与えられたジークベルトが愛する人たちを守るため、努力し続ける姿勢に胸が熱くなる。そして、彼がチャンスを掴み成長していく姿を見守っているうちに、現実社会での不運な出来事や困難もこれから待ち受ける幸運を手に入れるためのチャンスなのではないかと思えてくるのだ。

チートなだけではない、失い、乗り越え、強くなっていく少年の成長譚

 母の死から4年、魔法の修行と戦闘訓練に励んだジークベルトは格上の魔物さえも討伐できるまでに成長していた。ある日、原因不明の転移石の暴走によって、彼はダンジョンへと転移する。そこで、他国の王女を狙う陰謀に巻き込まれてしまう。そのさなか、王女を狙う刺客との命をかけた死闘の末に勝利し、ジークベルトは自らの運命を知ることになる。

 それはアーベル家の秘密にかかわるものだった。夢かうつつか、ジークベルトは目の前に現れた亡き母に世界を統べるだけの力が備わっていると明かされ、彼女は宿命を背負うことになる息子を危惧する……。ジークベルトは家族や大切なものがあるこの世界を守りたい、そのためには強くありたい、と改めて決意した。

不運からの最強男

 最新4巻では、引き続き王女をめぐる事件を中心に物語が進む。本作でジークベルトは母親の死を防げなかったトラウマと向き合うことになる。そして、大切な人を守るためには、強さだけではなく周りに助けを求めること、自分の弱さと向き合うことの大切さに気づくのだ。

不運からの最強男

 不運だった男が転生してチート級の力を得れば、新しい人生はイージーに生きられそうなものだ。ただジークベルトになった彼は、そうしない。自分を愛してくれる、家族をはじめとする人間たちを、その力で守ろうとするのだ。その主人公の素直さ、まっすぐさは数ある“転生もの”のなかで希少だと感じた。そして、その能力の設定と展開も絶妙だ。神から与えられるチャンスを引き寄せる「幸運者」であるジークベルトは、そのチャンスを掴むために危機に立ち向かわざるを得ない。そしてその先に成長が待っている。不運は強くなり幸運を得るためのチャンスなのだ。

文=古林恭