右利きだと気がつかない、左利きが持つさまざまな苦悩――その歴史と現状を解説!

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公開日:2023/10/11

左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ
左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』(大路直哉/PHP研究所)

 私は右利きだ。正直、これまでに利き手をそれほど気にしたことはない。強いて言うならば、野球の「左投げの投手」やテニスの「レフティ」など、少数だからこそのアドバンテージに憧れたことはある。言うなればその程度の理解だ。

 本書『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』(大路直哉/PHP研究所)は、自身も左利きでWEBサイト「日本左利き協会」を設立した大路直哉氏が、左利きの歴史や宗教から苦労話までといった、さまざまな視点から左利きを解説。右利きの私が想像もしなかった興味深い話題が語られている。

 本稿では本書で紹介されている左利きの苦悩を3つピックアップ。右利きの人は「そんな苦労があったのか……」と、左利きの世界への理解を深められるはずだ。

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左利きの苦悩①「定規」

 左利きであれば持ち手と刃先が見えにくいことから、右利き用のハサミが使いにくいというのは有名な話。もう一つ、入学準備で買いそろえる「定規」が使いにくいというのはなるほどと思った。一般的な定規は目盛りの0は一番左側。そこから右へ数字が大きくなるが、それは右利きが0を始点に線を引くことが前提となっているという。

 左利きが定規を使う場合は、始点を0以外に設定する。そこから5cmの線を引きたい時は「10から5」と引き算をしながら引かなければいけない。もう一つ、0を始点に押すように線を引く方法もある。だが、押すように線を書くと悲しい事件が発生しやすい。途中で鉛筆の芯が引っ掛かり、紙を破いてしまうリスクが高まるのだ。

 左利きの同級生はこんな危険と隣り合わせで過ごしていたのかと思うと、「お疲れ様」と労いの言葉を掛けてやりたい。今さらではあるが。

左利きの苦悩②「レードル」「ATM」

 レードルとは、食べ放題などで汁ものをすくう、容器に注ぎやすいよう片側に注ぎ口が付いている“おたま”だ。これこそ今さらながら気がついたが、これまで使ってきたレードルは全て、左手に容器を持って右手で汁ものを注ぐ、右利き用である。また、ATMも暗証番号や金額を入力するテンキーボタンが画面の右側に位置していることが多いので、これも左利きには不便であることは容易に想像がつく。

左利きの苦悩③「横書き」

 小学生のころ、作文を書いていて「縦書き」が不満だった。書き続けていると右手の小指側面が書いた字をこすってしまい、真っ黒になるからだ。ひどい時はせっかくキレイに書いた字を汚くしてしまうことも。大人になると「横書き」が増えたので、無用なストレスにさらされなくなった。

 だが左利きにとって横書きは、右利きにとっての縦書きのように憎いもの。同じく利き手の小指側面は黒くなり、書き終わった部分は見にくくなる。しかも大人になれば、鉛筆ではなくボールペンを使う機会が増える。そう、鉛筆よりも指に付いたインクは消えにくいのだ。

 一方の利を取れば、もう一方の利を損なう。完璧な解決方法はないかもしれないが、そういう視点もあるのだということを忘れないようにしたい。

 このような「ならでは」の苦悩以外にも、本書では宗教や歴史、才能、脳と身体など、あらゆる視点から左利きを説明している。なかでも興味深かったのが日本の神道と“左”に対する考え方だ。天照大神は左目から生まれた。ゆえに左は右よりも上位である、という考え方があるという。このような知識もふんだんに盛り込まれているので、雑談用のネタなどにチェックしてはいかがだろうか。

文=冴島友貴