「俺はいいけどYAZAWAが何て言うかな?」なりたいキャラを具体化して行動すれば、性格までも変わる「物語思考」のコツとは
公開日:2023/10/17
「俺はいいけどYAZAWAが何て言うかな?」
本人の発言かどうかの真偽は不明だが、矢沢永吉さんのこんな名言がある。
「いかにも永ちゃん言いそうwwww」と笑ってネタにするだけでも面白い言葉だが、『物語思考 「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』(けんすう/幻冬舎)では、この発言から矢沢永吉さんを深く分析。こうした発言をする(しそうな)矢沢永吉さんが、「自分のキャラクターを作って、それにより行動(プロセス)を変えている人物」として紹介されており、深く納得した。
自分でキャラクターを作り、そのキャラクターを客観視しつつ、演じる。「自分とは何か」「自分は何がしたいのか」などと悩んだり考えたりするよりも、「自分がなりたいキャラ」を考え、“そのキャラがしそうな行動”をひたすら続けるほうが、自分が生きたいような人生をいきいきと楽しめるはず……。
同書の主張はそう続いていく。
このように『物語思考』は、一般的な自己啓発書やビジネス書とはかなり違った形で「キャリア設計」を考え、「成功」や「幸せな状態」を目指していく内容だ。以下、その勘所をひもといてみたい。
なりたいキャラを具体化し、行動すれば、性格までも変わる
本書には『物語思考』というタイトルが付いており、「物語の主人公のようにキャリアを考える方法」を伝える内容だ。面白いのは、その物語や主人公=自分のキャラクターを、「過去の蓄積から作られてきた自分」を起点に作るのではなく、「未来の自分の理想の姿」から逆算して作っていく点だ。
つまり、この本のキャリアプランの作り方は、「自己分析をして、やりたいことを見つけて、キャリアプランを作る」という一般的な方法とは正反対なのだ。
なぜ、そうした方法をとるかというと、著者のけんすうさん自身が、そのような人生を生きてきた人間だからだ。
けんすうさんはSNSでの発言も注目も浴びる著名な起業家だが、学生時代から「自分が凄いと思う人」や「なりたいキャラ」である糸井重里さんやひろゆきさんと繋がりを持とうと様々な試みを実践。実際に繋がりをもつことに成功してきた(ちなみに2人は本書の帯文を書いている)。
そうやって「なりたいキャラ」を具体化し、そのキャラが身近にいる環境に自分を置くことで、自分の行動もその人たちに似たものに変わり、性格までも変わっていったのだという。
実際にけんすうさんは、もともと気弱な性格で部活も続かず勉強もできず、リーダー気質もない人間だったそう。それが、上記の方法をとることで性格もガラリと変化。社長として人前で話すことも、リスクを取って起業することも厭わない人間になり、「自分をそういうキャラクター」だとどんどん思い込むようになったそうだ。
……と、けんすうさんの成功譚をもとに本書の勘所を紹介していくと、「そんな方法、フツーの人に実践できるかよ!」と思う人もいるかもしれない。だが本書では、そうしたキャラクターの作り方、解像度の高い未来の描き方を、手を変え品を変え250ページ程度で繰り返し丁寧に解説している。
なおけんすうさん自身も自己啓発本をめちゃくちゃ読み、その通りに実践することで、小さな成功をどんどん重ねてきた人物だという。やはり本書のロジックを体得して実践するには、実際に書籍を手に取って「そういうことか!」と納得しながら読み通すことが必要なのだ。
そのほか本書には
・人は失敗をマイナスと捉えがちだが、物語的にはプラスのもの(失敗が物語を面白くする)
・人生をシーン単位で考えると、「このシーンが長すぎるから、そろそろ場面転換をしないと」と新たな決断をしやすくなる
といった物語思考の効用や、
・大きな夢や目標を持つ凄い起業家の特徴は、「自分の設定した夢や目標を変えるのに躊躇がない人」
・何かを成功させるためのコツは「最初は自分の頭で考えないこと」(マニュアルどおりにやれば、誰でもうまくいく可能性が高い)
・やる気は実行しないと出ない
といったマーカーで線を引きたくなるような金言も数多く登場する。起業家であり、なおかつ自己啓発書を数多く読んできたけんすうさんだからこそ書ける内容だと感じる部分も多く、自己啓発書を読み慣れている人にも、自己啓発書をはじめて読む人にも、非常に面白く読める内容だ。
文=古澤誠一郎