時給アップのために国家資格取得、悩みは道具がうまく使えない…工業高校の青春の面白さに気付かされる、『只野工業高校の日常』最新刊が登場!
PR 公開日:2023/10/19
高校生の日常と書いて、「青春」と読む。それくらい高校生の日々はキラキラしていて、尊い。ときには馬鹿なことをしてみたり無駄なのではないかと思うことに熱中したり、その時間すら貴重で、掛け替えのないものだ。そんな高校生活を追体験させてくれるような作品がある。それがマンガ『只野工業高校の日常』(小賀ちさと/集英社)だ。ただし、本作にはちょっとしたスパイスが加えられている。それは「舞台が工業高校である」ということ。この味付けにより本作は、一風変わった高校生活が思い切り楽しめる仕上がりになっているのだ。
メインキャラクターは3人の男子高校生。ピアスに金髪で若干ヤンキー臭が漂う赤崎眞央、高身長でガタイがいい仙堂勝利、ムードメーカーで専門教科が苦手な八坂斗真。彼らがワチャワチャする様子を通して、工業高校の風景が描かれていく。
3人が通う「只野工業高校」はとある雪国の片田舎にある工業高校で、全校生徒数は378人。そのうち333人が男子で、45人が女子だ。機械科、自動車科、電気科、設備科の4つの科があり、赤崎たちは電気科の2年生。全体的にヤンキーっぽい生徒が目立つものの、そこら中で抗争が勃発するような不穏な学校というわけではなく、常に穏やかでのんびりした雰囲気が漂っている。メインの3人もどこかヤンチャな面はあるものの、想像以上に“ふつう”の生徒だ。
ただし、随所に「そんなことするんだ!」という驚きがちりばめられている。
たとえば一見不真面目な赤崎は、実はさまざまな国家資格の持ち主。第二種電気工事士、危険物取扱者乙種4類、工事担任者DD3種と、高校2年生にして専門的な資格試験にいくつも合格している。高校生の頃に取得する資格といえば英検や漢検などが一般的だが、赤崎の戦績を見ると、流石は工業高校生……と感嘆してしまうだろう。ガソリンスタンドでバイトをしている仙堂は「時給アップ」のために危険物取扱者乙種4類の勉強をしているし、電工ナイフを上手に扱えない八坂は、自身が工業高校に向いていないのではないかと思い悩んだりもする。それもこれも、やっぱり工業高校ならでは、だ。
1巻の終わりには機械科に女子生徒・永廻咲が転校してくる。男子の比率が高い工業高校において、貴重な女子だ。それを機に、女子目線での工業高校の様子も描かれていく。また2巻以降ではスポットライトが当たる生徒が徐々に増えていき、実に多様な日常が繰り広げられていくことになる。そして、本作の最大の魅力はここにあるのだ!(と断言しておきたい)
赤崎、仙堂、八坂の3人も充分にキャラが立っていて面白いのだが、本作では巻数が進むごとに、どんどんキャラの濃いメンツが加わっていく。転校生の咲もそのひとりだし、他にも、金髪でクールビューティーな金原美也子、咲がクラスに馴染めるように気遣う武田宗史郎、自動車が大好きなのに乗り物酔いする安藤スバル、赤崎のような陽キャを苦手とする宮沢悠、常にダルそうにしている教師の藤原丞……。ひとり、またひとりと新キャラが加わり、本作の面白さは掛け算のように膨らんでいく。そこでオススメしたいのが、“推しメン”を決めて読むことだ。そうすることで「あ、今回は●●回だ!」とワクワクしながら楽しめるだろう。ちなみにぼくの個人的な推しメンは、永廻咲と宮沢悠。どちらも決して我が強いわけではないのに、周囲に流されない独特の個性を持っていて、登場すると頬が緩んでしまう。
さて、そんな本作も10月19日に第9巻が発売される。描かれるメインエピソードは「修学旅行」。そう、高校生にとっての一大イベントだ。ただでさえ盛り上がるであろうイベントを、只工の面々はどう楽しむのか。ハプニングは起きないのか。期待しながらページを捲っていったが、これが予想以上に面白かった。そして思うのだ。こんな高校が実際にあるなら通ってみたかったな、赤崎たちと友達になってみたかったな、と。
文=イガラシダイ