今やっていることは本当に全て必要? タスク改善を考えるうえでの落とし穴/仕事に追われず自分の時間を確保する
公開日:2023/10/20
やることはたくさんあるのにいつも時間が足りない…。そして改善するための技術や効率を上げるスゴ技を教えてもらってもマネできず、結局解決しないという人は多いのではないでしょうか。
そんな人には、ハック大学 ぺそ氏による『仕事に追われず自分の時間を確保する』がおすすめです。ハック大学 ぺそ氏は、チャンネル登録者数27万人超えのYouTubeチャンネル「ハック大学」で時間管理や業務の効率化といったビジネスに役立つ動画で人気を集めている人物。
本書では動画で好評だったテーマ、なぜ時間が足りなくるのかを解説し、ちょっとしたマインド改革と方法で「仕事の時間不足を解消する」ワザを教えてくれます。仕事の優先順位が分からない人、メールの返信対応だけで数時間かかってしまう人に読んでもらいたい1冊です。
企業でよく使われる「業務改善」。いるものといらないものを分け生産性を上げるタスク改善は、企業のみに当てはまると思っていませんか?
※本作品は書籍『仕事に追われず自分の時間を確保する』(ハック大学 ぺそ/ポプラ社)から一部抜粋・編集しました
作業に忙殺される人がいつも考えていること
ある程度の規模以上の組織では、「業務改善」という名のもとに、一定周期で業務の見直しをおこないます。その手順は企業ごとにかわってくると思いますが、業務の棚卸し、業務の評価、改善の実行という流れで進んでいきます。
この要領で、まずは部屋になにがあるのかを網羅的に把握し、いるものといらないものにより分け、いらないものを捨てる……企業でおこなう業務も同じように整理整頓していくわけです。
年末の大掃除のように、企業は(ときには外部のコンサルなどを入れて)定期的に業務の見直しをすることで、会社全体の生産性を上げる取り組みをおこなっています。
無駄な業務に社員の時間を使うのではなく、より会社にとって必要性の高い業務に社員の時間を割り当てる……貴重な資産である時間の配分をかえることで経営的に強い会社を目指しているのです。
本書を手に取っている読者のみなさんも、キャリアのどこかでこの「業務改善」を経験したことはあると思います。
経験はなくとも、「業務改善のイメージがわかない」という人はほとんどいないと思っています。仮にイメージがわかなくても、「業務改善をすべきではない!」なんてことを想う人はいないはずです。業務改善の大切さやその効能は一般的に知れ渡っています。
しかし、いざ個人の話になると、この業務改善の大切さを忘れてしまう人がなぜか大量発生します。
会社の業務改善を個人に当てはめると、「タスク改善」になるかと思いますが、絶対にやるべきことだと頭ではわかっていたとしてもできている人は少ない印象です。
私はYouTubeや書籍で発信する傍ら、コーチングという形でさまざまなビジネスパーソンのお悩みをお聞きしています。前述のような「タスク改善できない人」というのは、必ずといっていいほど「タスク改善をする」という発想がありません。タスク改善をしたいけどできないのではなく、〝タスク改善をしない〟ことを自分の意思で選択している人がほとんどなのです。
私のクライアントに仕事を追われて精神まですりへらしている女性の方がいました。彼女の話を聞いていると、「作業」に忙殺されていて、「思考」をする時間が明らかに少ない印象を受けました。
本書を書いている間にも世間を賑わせているAIが得意なことは「作業」です。私は彼女に、思考よりも作業の割合が増えているのは危険な兆候であるということをお伝えしました。
彼女は、「私がやっている作業はすべてやらなければいけないことだ」と信じていました。「このタスクを終わらせないと別の部署の○○さんが作業できない」「これは数年前からこの部署で必ずおこなっている作業なんだ」と、彼女の作業が無駄でない理由を聞かせてくれましたが、すべてではないものの、客観的にみるとそこには無駄がたくさん眠っていました。
この事例を聞くと、「その女性が優秀ではなかったんじゃない?」と思われるかもしれませんが、この女性のようにタスクの無駄と向き合わない人は多くいます。
なぜこのような選択をしているのかというと、こういった方は〝超短絡的〟な思考に陥っているからです。
タスク改善をして無駄を省くことで将来的に得られるはずの「自由な時間」を捨ててでも、手元にあるタスクを少しでも進めたいという気持ちが強いということです。
「今日1000円もらうか、1か月後に1万円もらうか」と聞かれれば、自転車操業で財務逼迫している人以外は後者を選ぶかと思います。こんな当たり前のレベルの選択肢であっても、それが時間の話になるとほとんどの人が目先のものを取りにいってしまいます。
実は個人が時間を作り上げる方法も企業のそれとほとんどかわりません。いま持っているタスクを棚卸しし、それらを評価した上で適切な対処をする。まさに業務改善なのです。
具体的には無駄なタスクにかけている時間をより有益なタスクに振り分ける、ただそれだけの話です。
個人だと配置転換のような大技は仕掛けられませんが、無駄な業務・タスクを削減していくという方向性に大きな違いはありません。
そして皮肉なことに「無駄なタスクに忙殺されている人」ほど、その余裕のなさから、タスク改善プロセスが踏めていなかったりします。
つまりここでも、時間に余裕のある人はタスク改善をする余裕が生まれて、より「時間裕福」になっていき、逆に時間の余裕のない人は同じロジックで「時間貧乏」になっていくという格差が生まれ続けているということです。