『金の斧銀の斧』あらすじ紹介。泉の女神、最初は女性ではなかった!? 予期せぬ質問、求められていたのは対応力ではなく…
公開日:2023/10/30
世の中が乱れ、道理がなかなか通らないことを「正直者は馬鹿を見る」と言うことがあります。一方で「正直者は得をする」という教訓を含んだ物語は古くからみられ、『金の斧銀の斧』はその中でもよく知られた童話のひとつです。はじめての絵本や読み聞かせの定番でもある本作のあらすじを、改めてご紹介しましょう。
<第44回に続く>
『金の斧銀の斧』の作品解説
本作は紀元前6世紀頃に成立したとされる『イソップ寓話』のひとつで、正直者が得をし、強欲な者は損をするという教訓を示す物語です。
原典では、木こりが落とした斧を拾うのは女神ではなく、天界・冥界・地上を行き来するギリシャ神話の青年神「ヘルメース」という違いがあります。日本神話では水神は女神であることが多く、ヘルメースは水や水銀といった「流れ」を司る男神(両性具有の神とも)と言われることから、清らかな泉のイメージと結びついたのかもしれません。
『金の斧銀の斧』の主な登場人物
木こり:働き者の正直な木こり。
神さま:斧を持って泉の中から現れる。原典ではヘルメース神が川に潜って取ってくるとされる。
欲張りな木こり:欲張った結果、かえって損をすることになる。
『金の斧銀の斧』のあらすじ
働き者の木こりは、手が滑って泉に斧を落としてしまいました。泉の中から神さまが現れ、泣いている木こりにどうしたのかと聞くので、木こりは大事な斧を落としたと答えます。すると神さまは泉から金ピカの斧を取ってきて「あなたの落とした斧はこの金の斧ですか」と聞くのです。
木こりが正直に違うと答えると、今度は神さまは銀の斧を持って現れます。「違います。古い鉄の斧です」と答えた木こりの正直さに、神さまは拾ってきた鉄の斧と、金銀の斧を全て木こりに渡しました。
これを聞いた欲張りな木こりは、泉に自分の斧を投げ込み、ボロボロの斧を金の斧に換えようとします。嘘泣きで神さまをおびき寄せると、木こりのときと同じように神さまが金の斧を差し出すので、欲張りな木こりは「それが私の斧です」と口走ります。神さまは「嘘つきには斧を返しません」と言い放つと、金の斧を持ったまま泉の中に去っていきました。嘘をついたばかりに、欲張りな木こりは自分の斧まで無くしてしまうのでした。
『金の斧銀の斧』の教訓・感想
昨今では「正直者は損をする」ということが言われますが、この寓話のなかでは正直であることの大切さを読む人に伝えてくれます。同時に、ずるをして利益を得ようとする者は足元をすくわれることも、この寓話から読み取れる教訓です。