『ぶんぶくちゃがま』あらすじ紹介。たぬきが茶釜に化けて芸をする…だけじゃなかった! 芸達者なたぬきと心優しい男の交流を描いた昔話
公開日:2023/10/31
昔話の登場人物としては常連といえるたぬき。ほとんどの作品ではずる賢い・いたずら好き・たちが悪い、といったイメージで描写されていますが、『ぶんぶくちゃがま』に登場するたぬきは、そんなイメージとは一線を画し、健気なマスコット的キャラクターという点でとても魅力的です。
本稿では、『ぶんぶくちゃがま』の概要・登場人物・あらすじをわかりやすくご紹介します。たぬき好きの方もそうでない方も、ぜひご一読ください。
<第45回に続く>
『ぶんぶくちゃがま』の作品解説
『ぶんぶくちゃがま』は、上野国(現在の群馬県)に実在するお寺である茂林寺(もりんじ)に伝わる伝承がもとになった昔話であり、明治から昭和にかけて活躍した作家・児童文学者である巖谷小波がおとぎ話として再話した『文福茶釜』が流行して広く人々に普及しました。本稿では巌谷小波が再話した『文福茶釜』について紹介します。
『ぶんぶくちゃがま』の主な登場人物
たぬき:猟師から逃れるため茶釜に化けたが、元に戻れなくなってしまう。
和尚さん:茂林寺の住職。茶の湯が趣味である。
屑屋さん:廃品回収で生計を立てている心優しい男性。
『ぶんぶくちゃがま』のあらすじ
むかしむかし、上野国の館林というところに茂林寺というお寺がありました。茂林寺の和尚さんは茶の湯が趣味で、あるとき、茶釜を買ってお寺に帰ったところから物語ははじまります。
この茶釜はなんとも不思議な茶釜で、和尚さんが居眠りをしていると、茶釜からたぬきの頭や手足を生やすのです。それを見た小坊主たちはびっくり仰天。寺じゅう大騒動になりました。ところが、和尚さんはそれをまったく信じようとしません。
そんなあるとき、和尚さんがお湯を沸かそうと、茶釜を炉にかけると、頭を生やし尻尾を生やし、足を生やした正体を現しました。
「これはなんと怪しい茶釜だろう」と不気味に思った和尚さんは、屑屋さんに茶釜を売り渡しました。
その日の夜のことです。茶釜は自ら頭と手足の生えた正体を現し、猟師から逃れるために茶釜に化けたことを屑屋さんに明かし、ぶんぶくちゃがま(文福茶釜)と名乗りました。たぬきは、火にかけられたり、カンカンと叩かれたりと寺で散々な目にあったことをなじります。そして、屑屋さんには自分を丁重に扱ってほしいと懇願します。
「丁重に扱ってくれるなら、軽業や踊りの芸を披露しましょう」とたぬきが持ちかけると、屑屋さんは見世物小屋を作りました。たぬきは音楽に合わせて踊りを踊ったり、綱渡りをしたりして人々から人気を博しました。
一財を成した屑屋さんは大満足。儲けの半分をお布施とするとともに茂林寺に茶釜を返却しました。それから、ぶんぶくちゃがまは茂林寺のお宝として、末永く大切にされたのでした。
『ぶんぶくちゃがま』の教訓・感想
屑屋さんは、ぶんぶくちゃがまの力によってお金儲けをすることができましたが、それで貪欲になることなく、儲けの半分をお布施にしたうえに茂林寺に返還しました。欲張らないことの大切さ、そして優しい心を持つことの大切さを教訓としているお話といえます。