新刊絵本『赤いけいとでつながって』(BL出版)

文芸・カルチャー

公開日:2023/10/13

相手のことを思いやったはずなのに、いつのまにか思いやった自分の気持ちが大切になって、本当の思いやりが見えなくなること、ありませんか?

 

思いやりと友情をテーマにした『赤いけいとでつながって』をご紹介します。

ストーリー

あなぐまのアニーとやまあらしのチックルは、とってもなかよし。

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ある日、それぞれが森で赤い毛糸をひろいました。

 

ふたりは、おたがいに相手の喜ぶものを編もうとしますが、実はその毛糸は1本で、編みあがりそうになると相手のほうに糸が引っぱられ、ほどけてしまうのでした。

 

毛糸をめぐり、ケンカになったふたりは……。

思いやりとは……

相手のことを思いやって、毛糸を編みはじめたふたり。ところが、いつのまにか思いやった自分の気持ちが大切になって、相手の気持ちは二の次に。こんなことって、大人でもあるあるですよね。

 

アニーとチックルは、怒りにまかせて毛糸を切ってしまいます。なんともドキッとするシーンです。でも、毛糸が2本になったことで、おたがいに適度な距離ができて、相手のことを冷静に考えられるようになったようです。

 

いろんなケンカやいがみあいのなかには、おたがいの優しい気持ちを意地でひっぱりあっているだけのケースもあるのではないでしょうか。ちょっと距離をおいて冷静に考えば、相手がどう思っているのか、なぜそう思うのか、相手の状況を思いはかることができるかもしれません。自分が相手の立場だったらと置き換えて考えるのではなく、すこーしだけ距離をおいて相手の気持ちを想像し、接すること、それが思いやりなのかなと思いました。

作者からのメッセージ

最後に、作者のリサ・モーザーさんが作品にこめた思いをお伝えします。

「私の願いは、子どもたちがこの本を読んで、おたがいを許し、おたがいを受け入れる方法を学ぶことです。友だち同士でも、意見がちがったり、怒りを感じたりすることもあるけれど、だからといって友情が終わるわけではありません。いつまでもかわらない友情を学んでくれることを願っています。

本文には「森」や「玉」など、簡単な漢字がほんのちょっぴり使われていますが、すべてふりがながついています。5歳くらいから小学校低学年のお子さまにおすすめです。ぜひ、親子で読んでみてください。