アニメ化もされた青春バレーボール小説シリーズが完結! コート横で観戦している気分にさせる、手に汗にぎる展開がアツすぎる『2.43 清陰高校男子バレー部』

文芸・カルチャー

PR 更新日:2023/10/18

2.43 清陰高校男子バレー部 next 4years〈I〉
2.43 清陰高校男子バレー部 next 4years〈I〉』(壁井ユカコ/集英社)

 このシリーズを読むまで、こんなにも男子バレーが熱く、こんなにも面白い競技だとは知らなかった。コートの中で共に戦う仲間を、選手たちが、こんなにも心強く思っていただなんて。見ていて照れくさくなるほど、まっすぐでまぶしく、そして、みずみずしい。そんな、読む者の心を震わせる青春バレーボール小説の金字塔——それが『2.43 清陰高校男子バレー部』(壁井ユカコ/集英社)シリーズだ。その5年ぶりの待望の最新作が、『2.43 清陰高校男子バレー部 next 4years〈I・Ⅱ〉』(壁井ユカコ/集英社)。2013年に刊行されてから10年、2021年にはアニメ化もされた大人気のこのシリーズは、この最新作でついに完結を迎える。

 シリーズを未読の方のために、シリーズ全体のあらすじをおさらいしよう。

 舞台は、福井県。東京の強豪中学バレーチームでのトラブルによって不登校となった灰島公誓は、幼少期を過ごした福井に転居し、幼なじみの黒羽祐仁と再会した。他人の気持ちが分からず、摩擦を引き起こしてばかり、バレーのことしか考えてない灰島と、ずば抜けた身体能力を誇るがプレッシャーに弱い黒羽は、紆余曲折を経ながらも、清陰高校バレー部のエースコンビとして成長。そして、福井県代表として、夢の舞台、春高バレーで全国の強豪に挑むことになるのだが……。

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 熱戦を繰り広げてきた彼らは、最新刊では、新しいステージ「大学バレー」に挑む。高校を卒業して、大学に進めば、そこでは、かつての敵が仲間になり、かつての仲間が敵になる。つまり、今までのチームがシャッフル。「え、あの高校のエースと、あの高校のエースが同じ大学?!」という驚きのドリームチームがあれば、「このコンビが敵同士だなんて?!」とハラハラさせられる試合も。そして、この物語は、灰島と黒羽だけが主人公というわけではない。大学バレーに全身全霊を注ぐ、登場する全ての人物が主人公だ。

 たとえば、第1話で中心に描かれるのは、かつて、福井県王者の主将として、清陰高校の前に立ちはだかった福蜂工業高校の絶対的エース・三村統。彼は、高校卒業後、中学時代に一度壊した両膝の再手術を受け、欅舎大学に進学。大学1年時はリハビリに費やしたが、大学3年になった今でも本調子ではないらしい。そこに入部してきたのが、かつてのライバル・灰島と黒羽。彼らが互いに示し合わせた訳でもないのに、欅舎大学を選んだのは、この大学に三村がいるためだった。だからこそ、彼らは、高校時代の実力を発揮できていない三村に歯痒い思いを感じる。それは、強豪校・八重洲大学に進んだ、三村の親友、福蜂工業高校出身の男子マネージャー・越智も同様だった。越智は、八重洲大学で、チームを勝たせるための戦略・情報をベンチへと提供するアナリストになったが、それは、5年、10年後、三村の力になれる人材になりたいと思ったからだ。もちろん、三村だって、このままでは終われないと思っている。リーグ戦で欅舎大学と八重洲大学が戦う時、一体、どんな試合が繰り広げられるのだろうか。

 第2話では、越智と同じ、八重洲大学の破魔清央と太明倫也という2人の新たな友情が描き出される。同じ八重洲大学には、その他にも、東京代表・景星学園高校出身の浅野が在籍し、「打倒・八重洲大学」を誓う慧明大学チームは、福岡代表、175cmの最強スパイカー・弓掛が、浅野のかつての後輩たちを率いているし……。誰もが高みを目指してやまない。欅舎大学、八重洲大学、慧明大学。新チームでの三つ巴の戦いは、どのように決着するのだろうか。

 「小説を読んでいる」というよりも、実際に、試合を間近で観戦したような感覚。それも、選手たちの心の声をものすごく近くに感じ、手に汗握らずにはいられない。その一球、一球に込められた情熱を知るにつれて、胸に熱いものが胸に込み上げてくる。なんという臨場感なのだろう。すべてのチームに勝ってほしい気がして、どのチームを応援すればいいのか分からない。それほどまでに、どのチームも、どの登場人物も魅力的だ。

 あなたも彼らの熱き試合を、このシリーズ完結作を、是非とも観戦してほしい。観戦しているうちに、ウルッときてしまうかもしれない。本当の強さとは何か。孤独とは何か。仲間とは何か。「なんとしても勝ちたい」というその気迫に、心動かされずにはいられないだろう。

文=アサトーミナミ