いつか必ず発生する大災害に備えて――「首都直下地震」「南海トラフ巨大地震」から命を守るために今すべきこと

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公開日:2023/10/24

首都防衛
首都防衛』(宮地美陽子/講談社)

 2023年10月上旬、連休のさなかに鳥島近海で発生した地震に伴う津波が発生。一部では「原因不明」とされ、列島に不安と緊張が走った。

 有事はいつ起きるか分からない。巨大地震、噴火、気象災害、ひいては、他国の脅威による攻撃……。書籍『首都防衛』(宮地美陽子/講談社)は、そんな未曾有の事態に備えて、私たちが「命を守るために何をやるべきか」と訴える一冊だ。

 過去のデータや専門家の知見にもとづく「最悪の被害想定」は、いつか訪れる惨事への警鐘を鳴らす。なお、過去の地震や津波による被害を記述しているのでご注意いただきたい。

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首都直下地震では「7秒間」の判断が生死を分ける

 タイトル『首都防衛』には、意味がある。連想されるのは「他国からの攻撃やテロなどから祖国、そして国民の生命を守ること」だが、あらゆる脅威から国家、国民を防ぎ守ることを考えれば「防衛」がふさわしいとする著者の主張はうなずける。

 例えば、この先30年以内に70%という高確率での発生が懸念される首都直下地震ではどうか。前例として、1923年発生の関東大震災では、東京、千葉、神奈川、埼玉、山梨で震度6を観測。当時、死者・行方不明者は約10万5000人を数えたという。

 もし自分が、大きな揺れに直面したらどうするべきか。地震発生から家が倒壊するまではわずか5~7秒で、震源付近であれば「緊急地震速報も間に合わないスピードで襲いかかってくる」と、本書は警告する。

 さらに、国内で観測史上初震度7を観測した阪神・淡路大震災では、死者約5500人のうち8割が、倒壊した住宅の下敷きとなった窒息または圧死とデータを示す。

 自宅が倒壊するのは悲しくとも「命がなければ建て直すことも、移住してやり直すこともできない」と著者。7秒間で自宅から逃げるのを日頃から肝に銘じて、いつか訪れる「その時までに何をすべきかを真剣に考えておく必要がある」と訴える。

未曾有の「南海トラフ巨大地震」で懸念される津波

 被害想定が「異次元」という南海トラフ巨大地震は、首都直下地震と共に強く警戒される地震災害だ。

 南海トラフとは「静岡県の駿河湾から九州の日向灘(ひゅうがなだ)沖までのフィリピン海プレートとユーラシアプレートが接する海底の地形を形成する区域」で、同区域では100~150年の周期で巨大地震が発生。前回より約80年が経過し、発生の確率は「日を増すごとに高まっている」と本書は警告する。

 なかでも懸念されるのは、自然災害で最も多くの犠牲者を出している津波の被害だ。過去の例として、2004年発生の「M9.3」を記録したスマトラ島沖地震では、インド洋沿岸の20万人超が犠牲に。2011年発生の東日本大震災では死者の9割以上が津波による溺死や圧死であった。

 南海トラフ巨大地震では、地震発生から3~10分程度で最大30メートル超の巨大津波の到達が予想されている。命を守るためには「1分でも早く、1メートルでも高く」が基本で、いつか訪れる大災害に備えて「どこへ逃げるか」を想定しておくことが求められる。

 地震にとどまらず富士山噴火や気象災害、他国からのミサイル攻撃にも言及した本書。私たちは、いかにして命を防衛するべきか。「災害によって犠牲になられた方々の思いや教訓を継ぐことは重要」とする著者のメッセージは胸を打つ。

文=カネコシュウヘイ